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施行された改正保険業法
●  保険業法改正で破たん前の予定利率引き下げが可能に
  8月24日、前の通常国会で成立した改正保険業法が施行された。これにより保険会社は、経営破たん前に既存契約の予定利率を引き下げることが可能になった。
  保険会社はあらかじめ保険料を一定の利率で運用することを前提に保険料率を算出しており、この一定の利率を予定利率と呼んでいる。予定利率を引き下げれば、同じ保険金額ならば保険料が上がり、同じ保険料であれば保険金額が下がることになる。予定利率は、バブル崩壊後、低金利・株安など運用環境の悪化を受けてたびたび引き下げられてきたが、引き下げが適用されるのは原則として新規契約についてのみであった。つまり、今回の改正の大きなポイントは、新規ではなく既存契約の予定利率引き下げが可能になった点である。
  もっとも、既存契約の予定利率引き下げ自体は、過去にも保険会社の経営破たん時に行われたことがある。しかし、今回の改正では破たん前の予定利率の引き下げが認められたことが大きなポイントといえよう。
●  予定利率引き下げの手続き
  既存契約の予定利率の引き下げが行われた場合、保険金額が削減されるのが一般的である。このため、予定利率の引き下げは、憲法が保障する財産権の侵害に当たるのではないかとの意見もあった。それだけに今回の改正では、制度の適用にあたってとりわけ手続き面で慎重な取り扱いが定められている。
  予定利率の変更手続きは、まず、保険会社からの申し出に基づいて開始される。これを当局が承認すれば、保険会社は予定利率の引き下げ等に伴う保険金削減等の契約条件の変更案を作成することになる。変更案は、社員総代会または株主総会の特別決議により決定された後、再び当局の承認が必要となる。この承認を得た後、変更対象契約者に対し1カ月以上の異議申し立て期間が設けられる。この間に対象者の10%を超える異議がなかったことをもって、ようやく変更案が実行に移されることになっている。
  こうした手続き面に加えて、変更内容そのものについても一定の制約があり、政令により、引き下げの下限(現行3%)が設けられていたり、破たん時には認められる責任準備金の削減が認められないとされている。
●  改正保険業法成立の影響
  今回の保険業法改正は、平成14年度末にかけての株安進行時には、保険会社の経営問題がクローズアップされたことから大きな注目を集めた。しかし、最近の株価上昇による保険会社の運用環境の改善も背景に、近い将来この制度が実際に適用されるとの見方はますます少なくなっている。とはいえ、保険会社の経営悪化に対し、破たん処理以外の一つの選択肢が整備された意義は認められよう。
2003.09.01
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