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家計の外貨建て資産運用の推移をたどる
〜日本銀行「資金循環勘定」より〜
  外債や多くの外貨建てMMF、外貨預金など、外貨建て資産運用に対する関心が高まっている。その背景には、日本の超低金利、米国国債など信用度の高い債券を中心とする内外債券相場の上昇などが考えられる。また、為替相場の動向が外貨建て運用の増減に影響するといわれることがある。
  家計の外貨建て資産残高の推移について、また、残高の推移と為替相場(本稿では対米ドル)の関連について、日銀の統計を元に比較してみたい。
●  外貨建て資産保有額は、1990年3月末の約2.2倍
  家計の外貨建て資産運用については、日銀の対外証券投資と、外貨預金でとらえることが可能である。図1は、1990年3月末から2003年3月末までの毎年度末の家計における対外証券投資および外貨預金の合計額と、合計額の家計金融資産総額に対する割合の推移である(2003年3月末の資産額は速報値)。
対外証券投資には、主に外貨建て債券、外国株式、多くの外貨建てMMF、外国投資信託などが含まれる。毎月分配型の海外債券ファンドなど、海外資産に投資する国内投資信託は含まれない。
【図1  家計の外貨建て資産額と家計金融資産総額に対する割合】
(億円、%)
【図1  家計の外貨建て資産額と家計金融資産総額に対する割合】
  対外証券投資および外貨預金の合計額は、1990年3月末から直近の2003年3月末にかけて約2.2倍に、家計の金融資産総額に対する割合は、約0.6%から0.9%へと伸びたことが分かる。
●  為替相場に影響を受ける? 外貨建て資産保有額
  それでは、外貨建て資産の残高と為替相場は類似した推移をたどっているだろうか。図2は図1と同じ期間の対米ドル円相場、家計の対外証券投資、および外貨預金残高の推移である(2003年3月末の資産額は速報値)。
【図2  為替相場、家計の対外証券投資、外貨預金残高の推移】
(億円、1米ドル当たり円)
【図2  為替相場、家計の対外証券投資、外貨預金残高の推移】
(注)為替は東京市場インターバンク相場
(図1、2の出典日本銀行「資金循環勘定」)
  図2をみると、多くの年で、家計の対外証券投資が円高方向になると減少し、円安方向では増加することが分かる。一方、外貨預金残高の推移は対外証券投資ほどは相関しないように見受けられる。特に、1998年以降は為替相場に関わらず安定的に増加している。
  外貨預金が安定的に増加した要因には、
(1)
外貨預金の中には定期性預金が含まれ、為替相場の変動に応じた出し入れが難しい場合がある
(2)
銀行などが継続的に外貨預金を勧めていることが安定的な増加につながった
などの可能性が考えられるだろう。
  2003年8月25日現在の為替相場は117円台と、2003年3月末の119円よりも円高水準にある。2004年3月末にかけて為替相場が前年より円高で推移した場合、2004年3月末の家計の対外証券投資残高は、減少する可能性があるといえるだろう。一方、外貨預金残高は必ずしも減少せず、増加する可能性があると考えられるのではないだろうか。
(注)
外貨建て資産の残高は、外貨建て額が同じであっても円に換算する時点の為替レートにより、円安のときは換算額が膨らみ、円高のときは比較的小さくなる。従って、外貨建て資産額の増減には、換算為替レートに影響される部分があることに注意が必要である。
2003.09.01
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