>  今週のトピックス >  No.685
株価上昇の傾向に注目せよ
●  外国人投資家と個人投資家の動向の違いが株高の要因
  日本、米国、欧州において最近、株式市場の見通しが明るくなっている。そのため、新聞の一面広告や証券会社の店頭広告において、株式投資に関するものが目立つようになってきた。
  確かに、下図の日経平均株価の年初来からの推移をみれば、4月28日に7,608円と今年最安値となったが、それ以降は上昇トレンドとなり、8月28日には10,344円と、1万円の大台を約1年ぶりに回復している。上昇率でいえば、8月28日の終値が10,344円のため4月1日価格対比で約30%、今年最安値の4月28日対比で約32%にもなっている。
【2003年4月1日〜8月29日の日経225の推移】
2003年4月1日〜8月29日の日経225の推移
  しかし、多くの個人投資家は、今年度の日本株式市場の見通しにあまり明るい展望を持っていなかったため、この株価上昇を予想外だと感じている人が多いだろう。個人の意識と株価のミスマッチを起こした理由は、日本株を大幅に買い越した主役が外国人投資家であったからといえるだろう。
  最近の外国人投資家と個人投資家の売買代金差額(総合証券ベース)を比較して見ていると、両者の動向が大きく異なっていることが一目瞭然である。
【外国人投資家と個人投資家の月間売買代金差額(1部、2部合計、総合証券ベース)】
(単位:億円)
 
2003年5月
2003年6月
2003年7月
2003年8月
外国人
8,668
10,843
16,898
14,260
個  人
−2,322
−2,829
−852
−3,605
注)
上記数値で、プラスは買い越し(購入代金が売却代金より上回る状態)、マイナスは売り越し(売却代金が購入代金を上回る状態)を表している
  つまり、個人投資家が売り越し、外国人が買い越すという構図が5月以降成り立っており、これが個人にとって予想外の株高となった大きな要因といえる。
●  株価上昇で外貨投資、海外債券投資の流れが変わる
  今後も日本株の上昇トレンドが維持されるのか、それとも一過性で終わるのか、カギを握るのは、次の点である。
(1)
米国の大統領選挙に伴う選挙対策として、新たな経済政策の動向(米国株式市場にとってプラス要因となる可能性が大きく、その結果、日本株にもプラス要因となる)
(2)
日銀の円売り介入による為替政策の動向(政策の続行なら円安そして日本株高)
(3)
自民党の総裁選挙の動向(だれが総裁になるかよりも、その総裁がどのような政策を打ち出すか)
(4)
9月の各企業の上期決算、来年3月末の決算予想の動向(上方修正が多ければ株高)
(5)
日銀の金利政策の動向(金融緩和策によって、最近上昇傾向にある長短金利をどれだけ抑えることができるか)
  ここ2年くらいは、円安や高金利などを背景に、個人投資家の外貨投資や海外債券投資が急増する一方で、株式市場からの資金流出が続いていた。それだけに、この流れが大きく変わる可能性がある世界的な株高傾向は、注目に値する出来事といえる。
  自己責任時代を迎えた日本国民、ひいては日本経済全体にとって、この株価上昇傾向が非常に重要な節目になりそうな感がある。
上昇トレンド・・・
上昇開始時の安値と次の押し目(値を下げるとき)を結んだ直線のこと。次第に安値が切り上がって行くことが示されている。
2003.09.08
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