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介護サービスの外部評価事業が本格始動
〜悪質化する不正を抑えることができるか〜
●  増加する介護事業者間の悪質事例
  介護保険のスタートから3年が経過した現在、サービス事業者の不正が目立つようになってきた。これまで「不正」といえば、介護給付の不正請求というパターンが多かったが、最近はさらに悪質な事例も多発している。
  例えば、居宅介護支援事業者がケアプランを作成する際、特定の訪問介護事業者を優先的に組み込み、その見返りに現金を授受していたという事例。早い話が「わいろ」である。事件発覚後、贈賄側の訪問介護事業者、収賄側の居宅介護支援事業者、ともに介護保険事業者の指定取り消し処分を受けている。事業者間の現金授受で「指定取り消し処分」が出たのは、全国でも初めてのケースだ。
  また、無資格ヘルパーを派遣し、その分の報酬を不正請求していた事例。あるいは、施設長が入所者に対し、「要介護認定が重く判定されるように」偽装工作を強要していた例など、地方紙などをチェックすると、これでもかというほど事件があふれてくる。
  悪質事例の増加については、さまざまな理由が考えられる。一つは、介護報酬の低下や軽度の要介護者が増えている中で、事業者や施設の経営が安定せず、倫理崩壊に結びついているというもの。もう一つは、もともと悪質事例は存在したが、今まではそれが表に出なかっただけという説だ。
  後者については、現場の職員の間で内部告発に関する意識が根づいてきたこと、また、利用者やその家族の権利意識が高まり、公的機関に訴えるという風潮が芽生えたことが注目される。これまで、表立たなかった不正が、白日のもとにさらされる機会が増えてきたという点では、歓迎すべき状況なのかもしれない。
●  外部評価制度は国よりも地方が一歩リード
  こうした風潮に押されたわけではないが、厚生労働省もようやく、介護サービスに対する外部評価を全面的に義務付ける方針を掲げた。現行では、外部評価を義務付けているのはグループホームだけだが、これを2年後の2005年にすべてのサービスへと広げることが決まったのである。すでに平成16年度予算の概算要求では、第三者評価のモデル事業に対して、3.6億円を計上している。
  ただ、現場の視点からすれば、遅きに失した感がなくもない。介護サービスの質をどのように担保するかについては、介護保険のスタート前から何度も議論の対象になっていた。それが今日まで手付かずに来たということは、そもそも「適正な介護サービスとは何か」について、省庁内はおろか、業界内でもコンセンサスがとられなかったことを示している。
  一方で、東京都や大阪府など、自治体側が独自に「外部評価制度」を導入する動きはすでに始まっている。特に、評価が難しいといわれる訪問系サービスに関して、早くからそのしくみづくりに着手した点においては賞賛してよいだろう。
  考えてみれば、各自治体には介護保険事業が適正に行われているかを監視する責務があり、事業者指定に関しての行政処分も一身に担わされている。否が応でも動かざるを得ないプレッシャーが与えられているわけだ。
  このように自治体が先行し、国がその後追いをするという現象を見ると、介護保険制度そのものが、地方分権を推し進める役目を担っていることを改めて実感する。
2003.09.08
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