>  今週のトピックス >  No.690
9割以上の企業が初任給を前年のまま据え置き
  社団法人日本経済団体連合会は、2003年3月卒の「新規学卒者決定初任給調査結果」についてまとめた。回答のあった638社のうち、業種別でみると製造業と非製造業の割合は半々で、従業員500人以上の企業は69.9%であった。
  その中で今年の初任給決定状況をみると、「前年の初任給のまま据え置いた」と回答した企業は91.4%で、前年比10.3ポイント増加した。
●  大学卒の初任給伸び率は、0.1%と低い水準
  2003年の初任給水準の主だったところをみると、大学院事務系22万2,146円(対前年比上昇率0.0%)、大学卒事務系20万2,330円(同0.1%)、短大卒事務系16万8,941円(同0.0%)、高校卒事務系15万8,339円(同0.1%)、高校卒現業系16万431円(同0.0%)である。すべての学歴で、昨年と同じか引き続き低い伸び率になっている。
  産業別に初任給をみると、大学卒事務系では「印刷業及び出版業」が22万7,394円と一番高く、その次に「化学・ゴム」が20万8,979円となっている。一方、「金融・保険業」の17万8,755円、「電力・ガス業」19万3,954円などが低い初任給になっている。
  初任給の水準をみると世間で高給取りというイメージのある金融業が最も低いのは意外である。また最高と最低の差も4万8,639円となっており、前年の3万5,665円からさらに格差が広がった。
●  初任給は会社規模に比例しない
  初任給を規模別、学歴別にみると、大学院事務系では、100〜299人規模が最も高く22万4,527円である。大学卒事務系では300〜499人規模が最も高く20万8,109円となっている。これらの調査結果から、規模が大きい企業の方が必ずしも初任給が高いというわけではないといえる。
  また3,000人以上の大企業の各学歴初任給を100.0とした規模間格差からみると、高校卒現業(工場などの現場での業務や労働)系ではすべての会社規模が100.0を上回っており、3,000人以上の大企業が一番初任給が低い結果となっている。
●  初任給凍結企業が9割以上
  今年の初任給の決定状況をみると、「前年の初任給のまま据え置いた」と答えた企業割合は前述の通り91.4%であった。これは、前年の81.1%から10.3ポイントの増加で、1999年以降5年連続で全体の半数を超える結果となった。初任給を凍結した理由として在籍従業員のベースアップを実施しなかったとか、世間相場を勘案したり、また、経済情勢、企業業績が悪いためなどが考えられる。在籍者の賃金調整を行っている企業が多いことを考えれば、当然の結果だ。
●  企業の経営努力により、初任給で差別化をはかる
  自社の初任給水準について、企業がどのように評価しているかをみると、「現在の労働力需給関係からみて、ほぼ妥当である」とする企業が82.4%となっている。
  企業側も厳しい環境にあるとはいえ、優秀な人材を確保するためには、経営努力により少しずつでも初任給を上げていくことが望ましい。会社を動かすのは「人」そのものであることを考えれば、初任給を提示する段階で他社との差別化をはかっていくのも一つの手段であるといえるだろう。
(社会保険労務士  庄司 英尚)
参考資料:日本経団連「2003年3月卒新規学卒者決定初任給調査結果」 について
2003.09.16
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