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尊厳がキーワード!未来の高齢者介護
〜痴ほう性高齢者ケアの確立を目指して〜
  2000年4月に介護保険制度がスタートして3年半が経過し、さまざまな課題が見えてきている。労働厚生省の高齢者介護研究会による「2015年の高齢者介護」では、将来への課題と方向性が述べられている。2015年には、65歳以上の高齢者のうち10%以上が痴ほう性老人と予測され、約378万人に達するといわれている。
【高齢者介護の現状と課題】
1.要介護認定者の増加・軽度の者の増加
  要支援者への予防給付が、要介護状態の改善につながらない。また、軽度の要介護認定者の出現率は都道府県格差が大きい
2.在宅サービスの脆弱性
  要介護認定者の半数は施設サービスを利用しており、特別養護老人ホームの入所申込者が急増している。在宅生活を希望する高齢者が在宅生活を続けられない状態になっている
3.居住型サービスの伸び
  特定施設の利用が増加しており、居住型サービスへの関心が高まっている
4.施設サービスでの個別ケアへの取り組み
  ユニットケアの取り組みが進展し、個人の生活、暮らし方を尊重した介護が広がっている
5.ケアマネジメントの現状
  ケアマネジメントにおいて、アセスメント(ケアプランにおける要介護者のニーズを明らかにする課題分析)など当然行われるべき業務が行われていない
6.求められる痴ほう性高齢者ケア
  要介護認定者のほぼ半数に痴ほうの影響が認められるにもかかわらず、痴ほう性高齢者ケアはいまだ発展途上で、ケアの標準化、方法論の確立にまだまだ時間が必要
7.介護サービスの現状
  事業者を選択するための情報提供が不十分で、サービスの質に対する利用者の苦情が多く、従事者の質の向上、人材育成が課題。劣悪な事業者の存在があり、それを排除する効果的手段が不十分である
  高齢者介護研究会では現状と課題をふまえ、2015年における高齢者介護の目標として、“高齢者の尊厳を支えるケアの確立”を掲げた。新しいケアモデルとして、痴ほう性高齢者ケアの確立を目指している。
【痴ほう性高齢者ケアの普遍化】
1.痴ほう性高齢者ケアの基本は「尊厳の保持」
  痴ほう性高齢者の特性は、記憶障害の進行と感情などの残存があり、さらに不安、焦燥感などからの徘徊行動障害を引き起こし、環境変化への適応困難が見られる。その対応策として、生活そのものをケアとして組み立てる。
  • 環境の変化を避け、生活の継続性を尊重する
  • 高齢者のペースでゆったりと安心でき、心身の力を最大限に発揮した充実した暮らしを実現する。
2.日常の生活圏域を基本としたサービス体系
  小規模な居住空間、家庭的な雰囲気、なじみの人間関係、見慣れた地域での生活の継続を保持するため、
  • グループホーム
  • 小規模・多機能サービス拠点
  • 施設機能の地域展開
  • ユニットケアの普及
を推進する。一方で、事業者・従事者の専門性と資質の確保と向上を図る
3.痴ほう性高齢者と家族を支える地域の仕組み
  • 家族や地域住民に対する痴ほうについての正しい知識と理解の啓発
  • 住民による主体的な健康づくりと痴ほう介護予防活動
  • 早期発見、相談機能の強化、専門的人材の育成
  • 地域の関係者のネットワークによる支援
を図る
  だれもがなりうる可能性が高い痴ほう性は、家族への負担が少なく、人間性を損なわない介護体制の早急な構築が迫られている。
【痴ほう性高齢者の将来推計】
【痴ほう性高齢者の将来推計】
参考:高齢者介護研究会報告書「2015年の高齢者介護」
2003.09.22
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