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介護を理由とする男性離職者が若年化
〜総務省「就業構造基本調査」より〜
●  着実に増加する介護のための男性離職者
  総務省が発表した「就業構造基本調査」では、仕事を辞めた人の、辞めた理由を調査し、まとめている。辞めた理由の中には、「家族の介護・看護のため」の項目がある。家族の介護・看護のために仕事を辞めた人の数の推移は、図1の通りである。
【図1  介護・看護のため離職した人の数の年次推移】
【図1  介護・看護のため離職した人の数の年次推移】
(注)データは平成8年10月〜平成9年9月は1,000人単位、平成9年10月以降は1人単位。
(総務省「平成14年就業構造基本調査」)
  図1をみると、離職者の男女比は圧倒的に女性が多くなっている。ただ男性の離職者数も着実に増加しており、直近1年間では2万人を突破した。ここでは、家族の介護・看護のため離職した男性の実態について考察していこう。
●  40歳代後半と50歳代前半の男性離職者が増加
  図2は、家族の介護・看護のために仕事を辞めた人の年齢階級別割合を、平成8年10月〜平成9年9月の1年間と、平成13年10月〜平成14年9月の1年間で比較している。
【図2  家族の介護・看護を理由とする離職者の年齢階級別割合の変化】
【図2  家族の介護・看護を理由とする離職者の年齢階級別割合の変化】
(総務省「平成14年就業構造基本調査」)
  図2をみると、5年前は60歳代の男性離職者が多かったが、直近では40歳代後半と50歳代前半が増加している。
●  親の介護のために民間の介護保険ニーズが高まる
  次に、40歳代後半と50歳代前半の男性離職者は、だれの介護のために離職したのか考察したい。表1は、要介護者などと同居している主な介護者数を、それぞれ年齢階級別に示している。
【表1  要介護者などと同居している主な介護者数(年齢階級別)】
(介護を要する者数10万対)
【表1  要介護者などと同居している主な介護者数(年齢階級別)】
(厚生労働省「平成13年国民生活基礎調査」)
  表1より、40〜50歳代の男性が介護している要介護者等は、75〜79歳と、80〜84歳が多いことが分かる。これら世代は、40〜50歳代男性の親の年代であり、40歳代後半と50歳代前半の男性離職者は、親の介護を行うために離職するものと考えることができる。
  親の介護を理由とする40歳代後半と50歳代前半の離職者は、離職後に再び復職・転職をすることも考えられる。しかし、シングルであれ、有配偶であれ、家計にマイナスの影響が出る可能性がある。公的介護保険は介護サービスの現物支給であり、金銭の支給がないことを考えると、介護費用の自己負担分や、家計を補うために、民間の介護保険のニーズは今後ますます高くなるといえるのではないだろうか。
* 離職者とは、1年前には仕事をしていたが、その仕事を辞めて、現在は仕事をしていない者
2003.09.22
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