>  今週のトピックス >  No.696
「保険料水準固定方式」の導入が望ましい
  平成16年の年金制度改革に向けた厚生労働省の社会保障審議会年金部会は、9月12日、約1年8カ月かけた検討の結果を意見書にまとめた。主な内容として、保険料に上限を設ける「保険料水準固定方式」の導入や基礎年金の国庫負担割合の引き上げを求めるなど、少子高齢化が進む中で制度を維持することに重点を置いている。
●  残された公的年金の問題
  高齢者世帯の所得のうち公的年金が占める割合は約7割に達しており、公的年金を高齢期の生活設計の中心と考えている人も7割を超えている。このように国民生活に不可欠な存在となっている公的年金は、平成12年の制度改正において少子高齢化に対応するため将来の給付水準を適正化した。しかしながら、凍結された厚生年金、安定的な財源を確保しての基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げ、さらに、女性と年金の問題、働き方の多様化に現在の年金制度が対応できていないという問題が残されたのも事実である。
●  年金改革の基本的な五つの視点
  改革にあたっては、
  1. 社会経済と調和した持続可能な制度とする
  2. 制度に対する信頼を確保する
  3. 多様な働き方に対応し、より多くの者が能力を発揮できる社会につながりを持てる制度にする
  4. 個人のライフコースに対して中立的な制度とする
という視点を基本とし、
  1. 他の社会保障制度や税制などの諸制度との整合性
も念頭におく必要がある。
●  「保険料水準固定方式」の導入が適当
  年金制度改革では、最終的な保険料水準を法定化し、その上で、少子化などの社会経済情勢の変動や、年金を支える現役世代の保険料負担能力の動向に応じて給付水準が自動的に調整される仕組み、すなわち、保険料水準固定・給付水準自動調整の仕組み(以下「保険料水準固定方式」)を導入するのが適当である。
  保険料水準固定方式は、経済の活性化などに努めたり、少子化の流れが改善されれば、給付は高く維持できるという国民全体の社会経済の力を向上させる意欲につながる仕組みを制度に組み込むものであり、望ましいといえる。また厚生年金の保険料については、上限が年収の20%程度(労使折半で、本人負担は10%)を最大とし、複数案を例示した。
●  基礎年金の国庫負担割合の、2分の1への引き上げも検討
  平成12年改正法附則に規定された基礎年金に対する国庫負担割合の2分の1への引き上げについては、将来の保険料の水準が過大なものにならないようにし、給付も適切な水準を保つことができるようにするためにも今回の改正で実現させて、国民の信頼を確保しなければならない。
  次期改革のポイントとしてほかにも、年金受給者が働く場合、一律に年金の2割を削減する制度を廃止することや、離婚時に夫婦間で年金分割が可能になる仕組みを設けるべきといった意見もあり、厚生労働省がこれらを受けてどのような最終改革案をつくり上げるのか、大変興味深いところである。
参考資料:「年金制度改正に対する意見 社会保障審議会年金部会」
(社会保険労務士  庄司 英尚)
2003.09.30
前のページにもどる
ページトップへ