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財務省が「平成15年度税制改正事項の活用等に関するヒアリング調査」を実施
●  改正内容のより広い周知が求められる
  財務省は今年8月、平成15年度税制改正において経済活性化に資する観点から講じられた主な改正事項に関し、その活用状況などについて実態把握を行うため、個別企業(426社)・関係団体等(102先)に対してヒアリング調査を実施し、その調査結果を公表した。
  平成15年度税制改正は、経済を活性化することを目的に、「研究開発減税」「設備投資減税」「中小企業税制」「金融・証券税制」「相続税・贈与税制」「土地・住宅税制」など多方面にわたり行われた。今回のヒアリング調査では、これらの税制改正事項に対する評価および主な意見などがまとめられ、財務省は「かなり多くの企業・団体が各改正内容について関心を示し、肯定的に受け止めているが、改正内容の周知が不十分との声も聞かれることから、さらに広報などに努める必要がある」とのコメントをしている。
  この調査結果のうち、「中小企業税制」と「相続税・贈与税の一体化措置」についてもう少し掘り下げてみたい。
<平成15年度税制改正における「中小企業税制」の主な改正事項>
  • 同族会社の留保金課税の一部停止
  • 交際費課税の緩和
  • 少額減価償却資産(30万円未満)の全額損金算入の特例制度の創設
  • エンジェル税制の拡充
  中小企業税制の改正では、少額減価償却資産の全額損金算入が取得価額30万円未満まで引き上げられたことが大きな効果を生んでおり、パソコンやファクスなどを一新し、情報化投資の積極化につながっているとの意見があがっている。交際費課税の見直しについては、販売促進活動が活発化したとの意見がある反面、赤字企業には意味がなく、不況の中、交際費を増やすような状況にないとする否定的な意見も多い。
  また、ベンチャー企業の育成のため、ベンチャー企業向け優遇税制のさらなる改善を求める意見が多いのも特徴である。
<平成15年度税制改正における「相続税・贈与税の一体化措置」>
  • 相続時精算課税制度の創設
  • 相続税・贈与税の税率構造の見直し
  • 住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例の創設
  相続時精算課税制度の創設は、平成15年度税制改正の大きな目玉となった。親から子への財産の早期移転による有効活用を通じた経済社会の活性化に資するため、また、親子間の贈与について生前贈与の円滑化を図るために、この制度が創設された。贈与の自由度が増し、高齢者から若い世代への資産移転が促進されるものであり、特に住宅取得特例について65歳という年齢要件を外したことは、家を持とうとする子どもに対して贈与を行いたいという50代の親のニーズに合致しているとの一定の評価を得ているようだ。
  そのほか、成長性が高い企業の株主において
(1)
株価の低い現時点で株式を生前贈与することにより、その株式の評価額を固定化できる点
(2)
また相続税・贈与税の一体化措置の活用により、賃貸マンションなどの収益を生む財産の贈与を受けた子どもが、贈与財産から生じる収益を計画的に相続税納税資金などに活用することができる点
などをメリットとしてあげている。
  一方で否定的な意見では、一度この制度を選択すると従来の制度に戻すことができないため、この制度を選択することのメリット・デメリットを分析しなければならないにもかかわらず、具体的な適用案件が少ないため、現段階では本制度の評価は行いにくいこと、また、制度自体の理解が不十分であること、などの指摘が多い。
  平成16年度の税制改正に向けて、各省庁および関連諸団体から、要望事項が続々と提出されている。税制改正だけで経済回復が実現できるわけではないが、このような税制改正に対する国民の評価を真剣に受け止め、来年度の税制改正論議を行ってほしいものである。
2003.10.06
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