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「がんに対する重粒子治療」に高度先進医療の承認
●  従来、治療できなかったがんにも効果が認められる
  放射線医学総合研究所・重粒子医科学センター病院が申請していた「固形がんに対する重粒子治療」が10月1日、高度先進医療として承認された。高度先進医療に指定されることによって、重粒子線照射以外の診察や検査、投薬など、一般保険診療と共通する部分は特定療養費として保険給付される。
  これにより、患者の自己負担は重粒子線照射にかかる費用(特別料金)のみとなり、400万円近くかかっていた治療費が300万円程度の負担に軽減されることとなった。
  放射線医学総合研究所では、1994年6月から重粒子線治療の臨床試行を実施しており、2000年8月の時点で登録患者数が829例に達した。
  そもそも重粒子線とは、陽子線や重イオン線(炭素イオン線やネオンイオン線)などの総称で、このうち放射線医学総合研究所では、治療に最も適していると考えられる炭素イオン線を使用している。治療では、炭素イオン線を大型加速器で光速の84%の速度にして患部に照射する。
  放射線照射によるがん治療は従来から行われているが、従来の放射線は身体の表面近くで最も強く、深く進むにつれて線量が減少するため、患部に至るまでに正常な細胞が損傷を受けてしまうという欠点があった。
  これに対し重粒子線は、エネルギーの強弱に応じてある深さで急に強くなるがその前後では弱くなるという特性がある。従って重粒子線のピークをがんに合わせることで、正常細胞への影響を最小限に抑えることが可能になる。
  また、重粒子線はがん細胞を殺傷する能力が高いため、局所進行がんや従来の放射線では治療できなかったがんに対しても効果が認められる。現在では、ほとんどの臓器でほかの治療法で治癒が見込めない患者を対象としているが、特にX線に抵抗性を示す腫瘍(腺がん、腺様嚢胞がん、悪性黒色腫、肝細胞がん、肉腫など)で成果を挙げている。
●  重粒子治療の全国整備へ弾み
  高度先進医療は、2003年8月現在で79種類が認められている。そのいずれかを取り扱う病院は大学病院を中心に全国で100カ所あり、病院ごとに実施している高度先進医療を総計すると、271件に上っている。
  高度先進医療を実施できる病院は「特定承認保険医療機関」と呼ばれ、病院ごとに取り扱いのできる高度先進医療の種類が承認されている。
  高度先進医療を受けた場合、患者自身が負担するのは高度先進医療にかかる費用である。診察、検査、投薬、入院費用など、一般診療と共通する部分は健康保険の一般の保険診療と同じ扱いになり、特定療養費として給付される。
  今回承認された「固形がんに対する重粒子治療」は、重粒子線照射にかかる費用だけでも300万円程度となり、患者の自己負担は決して軽いとはいえないが、高度先進医療の承認に伴い、重粒子線装置の小型化を含め、全国整備への弾みとなることが期待される。
2003.10.14
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