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交通事故の発生件数、負傷者数は12年ぶりに減少
●  死者数も減少傾向に
  平成14年における交通事故(人身事故に限る)の発生件数は93万6,721件、負傷者数は116万7,855人で、平成2年以来12年ぶりに減少した。また、死者数は8,326人で前年と比べ421人の減少となり、過去最悪だった昭和45年の1万6,765人と比べると半減となった(表1)。
  戦後の急激なモータリゼーション(車社会化)に社会体制が追いつかず、道路交通事故による死傷者数が年々増加の一途をたどり、国を挙げてのさまざまな安全対策が進められてきた。
  この結果、死者数については昭和46年以降減少に転じ、その後、若干の増減はあるものの減少傾向にある。だが、発生件数および負傷者数は平成3年以降増え続け、さらなる安全対策の強化が課題とされてきた。
【表1 交通事故死者数、負傷者数、発生件数の年次推移】
死者数(人)
負傷者数(人)
発生件数(件)
昭和45年
16,765
981,096
718,080
50年
10,792
622,467
472,938
55年
8,760
598,719
476,677
60年
9,261
681,346
552,788
平成2年
11,227
790,295
643,097
7年
10,679
922,677
761,789
12年
9,066
1,155,697
931,934
14年
8,326
1,167,855
936,721
出典:財団法人交通事故総合分析センター「交通統計 平成14年版」
●  飲酒運転などへの罰則強化が減少の要因
  内閣府では、交通事故減少のために、交通環境の整備や安全運転の徹底、救急・救助態勢の整備といった諸対策を総合的に推進してきたことが、大きく寄与したと分析している。
  特に死者数減少の主な要因としては、危険認知速度(車両の事故直前の速度)の低下、シートベルト着用率の向上を挙げている。シートベルト着用率は平成5年以降上昇しており、平成14年は87.2%と9割近くになっている。着用者の致死率は非着用者の約11分の1で(表2)、チャイルドシートの着用と合わせるとその効果は明らかであり、今後もシートベルト着用の徹底は続きそうだ。
  また、昨年の死者数の大幅な減少には、平成14年6月に施行された改正「道路交通法」により飲酒運転に対する罰則が強化されたことが寄与したと考えられている(表3)。
  しかしながら、依然として多くの貴重な人命が交通事故によって失われたり負傷したりしている実情は深刻だ。国は今後10年間をめどに交通事故死者数を半減し、「世界一安全」な道路交通の実現を目指すとしている。
  確かに、救急態勢の整備や医学の進歩により、死者数は減少しているものの、5年サイクルでみると、表1のように負傷者数は増加傾向にある。平成14年における交通事故負傷者数の12年ぶりの減少が偶然によるものなのか、また、これが減少に転じるきっかけとなるのか、今後の実態が注目される。
【表2 シートベルト着用の有無別致死率および自動車乗車中死傷者の着用者率の推移】
【表2 シートベルト着用の有無別致死率および自動車乗車中死傷者の着用者率の推移】
【表3 飲酒運転による交通事故死亡件数および構成率の推移】
【表3 飲酒運転による交通事故死亡件数および構成率の推移】
表2、3の出典:内閣府「交通安全白書 平成15年版」
2003.10.27
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