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揺れる外国籍株式投資信託の税制
●  外国籍株式投信の税率が時限付きで10%に減税
  政府は、外国籍株式投資信託の課税に関して優遇税制を導入する方針のようだ。
  ご存じのように投資信託は、運用の専門家集団である投資信託会社が、多数の投資家から集められた資金を運用する金融商品である。投資信託は、どの国の法律で認可・設定されたかによって、国内籍投信(以下、国内投信)と外国籍投信の2つに区分される。そして、両者の代表的な相違点が課税関係である。
  まず国内投信の課税であるが、国内投信は契約型と会社型に区分され、ほとんどが契約型といわれている。どちらの収益分配金(有価証券運用によって発生した収益部分のうち投資家に支払われる部分)についても、原則20%(所得税15%・住民税5%)の源泉分離課税が行われる。また、国内投信のうち運用する有価証券に株式を組み入れることができるいわゆる「株式投資信託」については、来年1月から収益分配金が10%(平成20年3月31日まで)に減税される予定である。
  では、外国籍投信の課税はどのようになっているのだろうか。
  外国籍投信も国内投信と同様に、契約型と会社型に区分される(このうち国内で販売されているものはやはり契約型が多い)。このうち、契約型の外国籍投信においては、換金時に発生した有価証券の含み益と為替差益は非課税となっている(会社型は譲渡所得として申告分離課税)。
  日本証券業協会によると、平成15年9月末現在で国内投資家が保有する外国籍投信の残高は、約5兆3,292億7,000万円と5兆円を突破している。
  このような状況で、売却益や為替差益が非課税となっている現状はほかの金融商品と比べ不公平といえる。そのため、今年夏ごろから、契約型の外国籍投信のうち公募の外国籍株式投信について、来年の1月から、売却益の為替差益も含めた収益に対して、現在の会社型投信同様に26%の申告分離課税を行うよう関係機関で調整がなされていた。
●  国内投信・外国籍投信市場の着実な発展のために
  しかし、国内の投資信託はもとより株式の売却益であっても、原則20%へ減税(株式の売却益は今年1月から、株式投資信託の収益分配金は来年1月から一定期間は10%減税)された状況の中で、外国籍株式投信が26%の課税となれば、逆の意味で不公平となってしまう。
  そこで、政府は来年1月からの外国籍株式投信の税率に関しても、国内の株式投信同様に平成20年3月31日まで時限付きで10%に減税する方針を固めたという訳である。しかも、国内投信には認められていない特定口座の対象とすることも認め、納税の手間を少なくするように配慮する模様だ。
  政府としては、国内投信と外国籍投信の課税上の取り扱いをそろえることでなるべく分かりやすい制度にして、投信市場の着実な発展を期待しているようである。
  個人投資家が証券投資に参加する上で、分かりやすい制度へ大きく前進したこと、また国内投信と外国籍投信が課税面での有利・不利で比較されるのではなく、運用成果や手数料といった本来の商品力で公平な比較・競争が行われることを考えると、この改正は大いに歓迎すべきだろう。
  ちなみに、9月末で1兆1,716億6,000万円の残高を有し、外貨運用の人気商品である外貨MMFは、外国籍株式投資信託には区分されないため、現在の課税関係が変更されることはない予定である。
2003.11.04
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