>  今週のトピックス >  No.742
デフレからの脱却か!?
〜最近の消費者物価の動き〜
●  消費者物価が5年半ぶりのプラスに
  11月28日、総務省は10月の全国の消費者物価指数を発表した。これによると、総合指数は、98.3(平成12年=100、以下同)と前年同月比同水準となり、平成11年8月以来4年2カ月ぶりにマイナスから脱した。また、物価の基調を判断する上で注目されている価格変動の激しい生鮮食品を除く総合指数は98.3と前年同月比0.1%の上昇となり、平成10年4月以来5年6カ月ぶりに前年同月の水準を上回った。
●  日本銀行のリポートにみる物価の先行き
  今回の消費者物価指数の発表を受けて、日本銀行の調査統計局のリポートでも物価動向についての分析を行っている(要旨参照)。
【要旨】
  • 2003年初めころまで前年比0.8%前後のマイナスで推移してきた消費者物価の下落幅が徐々に縮小し、今回プラスになったのは、一時的な要因の影響が強い。
  • 具体的には、(1)医療費の自己負担率引き上げによる診療代の上昇、(2)増税によるたばこ代の上昇、(3)冷夏による米類の価格の上昇、(4)昨年実施された電気代引き下げの影響の一巡、が挙げられる。
  • これら要因は、2002年度中は0.1ポイント程度の消費者物価押し下げ要因として働いていたのに対し、直近では、0.4ポイント弱程度の押し下げ要因になっている。
  • これらの特殊要因を除けば、消費者物価は直近でも前年比0.3%程度の下落となっており、基調的には−0.7%程度から−0.3%程度へとごく緩やかにマイナス幅が縮小し、なおそれなりの下落が続いている、というイメージでとらえておく必要がある。
  • ただし、2001年ころからの動きを大局的にとらえると、基調的にみて下落幅がわずかずつではあるが縮小してきていることも事実である。
  • この要因として、経済が持つ供給能力と総需要との相対的な関係である需給ギャップが下げ止まりから幾分改善しつつあることや、企業の低価格戦略の一服などが考えられる。
  • 今後の展望としては、景気回復テンポが緩やかなものにとどまる可能性が高く、2004年度中に消費者物価の下落圧力が無視できる状態に至る可能性は低い。
  上記の日銀リポートをはじめ、今回の消費者物価指数の5年半ぶりのプラスという結果をもってしても、デフレから脱却できたという見方は少ない。今回の結果に慢心することなく、関係当局がデフレへの取り組みを引き続き継続することが求められよう。
2003.12.15
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