>  今週のトピックス >  No.757
銀行本体が証券業務参入 チャネルの拡大進む
●  現行のビジネスモデルから脱却を迫る
  総理大臣の諮問機関である金融審議会・金融分科会第一部会(部会長・神田秀樹東京大学教授)は昨年12月24日、銀行本体による証券業の参入に踏み込んだ報告を、竹中平蔵経済財政・金融担当相に答申した。
  「市場機能を中核とする金融システムに向けて」と題する報告の内容は、1.市場間競争の制度的枠組み、2.ディスクロージャー制度の整備、3.市場監視機能・体制の強化、4.投資サービスにおける投資家保護のあり方、5.投資教育のあり方、6.銀行・証券の連携強化と多岐にわたる。とりわけ注目を集めたのが、銀行本体での証券業の参入に踏み込んだ最終項目だ。
  本報告では銀行業における課題として、不良債権問題に象徴されるように「銀行に実体経済のリスクが集中している現状からの脱却」を挙げている。証券業については、富裕層、優良企業、デイトレーダーを対象としたビジネスモデルにとどまっていると指摘している。
  その上で「多くの個人および中小企業が市場参加するためには、個人にとって最もなじみのある窓口であり、中小企業の業務や財務、経営者や社員の能力・意欲を最も熟知している銀行が、証券会社まで誘導することが望ましい」と指摘した。
●  銀行で株の注文ができるように
  こうした現状認識を踏まえ報告では、証券取引法第65条*1の根拠となった弊害を防止する措置を条件に、銀行の証券仲介業*2の参入を解禁するよう、次期通常国会での法的手当てを求めている。これは、現行の子会社方式による証券業参入から一歩踏み込み、銀行本体での証券関連業務の参入に道を開くものといえる。
  銀行の証券関連業務については、平成10年に実施された投資信託の窓口販売解禁が記憶に新しい。解禁当初は、元本保証型商品である預金を長年取り扱ってきた銀行で投信販売が定着するのか、懐疑的な見方もあった。しかし株式投信の純資産残高シェアにおいて、銀行経由で販売された割合は直近で45.8%*3と、半数に迫る勢いとなっている。こうした経緯からみても、銀行で株の注文が可能になることによる衝撃は少なくない。
  今後の制度改正が業界の利害でゆがめられることなく、報告が示すように「顧客の利便性」を高めるものになることが求められる。
*1証券取引法第65条
銀行が主要な証券業務を行うことを禁じた証券取引法の規定。銀行による優越的地位の乱用(融資などを見返りとした証券業務の営業行為など)や、利益相反行為(企業に増資などで市場から資金を調達させ、融資を回収することなど)の防止をその趣旨としている。
*2証券仲介業
個人や法人が証券会社の代理店として証券会社と委託契約を結び、株式や投資信託などの売買を取り次ぐことができるようになる制度。平成15年5月の証券取引法改正で創設され、平成16年4月から開始される。税理士・公認会計士、独立系FPなどの参入が想定され、個人投資家層の拡大を狙いとしている。現在のところ、証券取引法65条を根拠に、銀行は証券仲介業への参入ができないとされている。
*3平成15年11月、投資信託協会調べ
2004.01.19
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