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個人投資家に勧めたい資産運用の5ステップ
●  環境改善と税制改正で個人投資家が動く
  日本株の運用環境改善および証券税制改正をきっかけに、今まで資産運用に興味を持っていなかった顧客層が今後新たに投資を始める可能性がある。こうした個人投資家に向けて、資産運用手順をアドバイスする際の考え方を紹介する。
  まず、2004年の日本株式市場の現状を見てみよう。大発会の日経平均株価は10,825円(148円高)となるなど、滑り出しは順調であった。日本株式に対する悲観論も2003年3月〜4月に比べ、かなり後退している。
  加えて証券税制改正により、2004年1月から公募株式投資信託および外国籍投資信託の収益分配金にかかる税金が、上場株式等の売却益や配当同様に軽減された。これは平成20年3月末まで、税率を現在の20%から10%に下げるというもので、投資促進策の一つである。
●  資産運用は5ステップで
  資産運用を行う場合にもっとも悩むことは、「どのような商品を選択すればよいか」であろう。しかし商品選択にたどり着く前に、資産運用におけるいくつかの基本的なステップを踏んでおくことが重要となる。
ステップ1  
金融資産を3つに区分する。
ステップ2  
投資する期間を、ある程度長期で考える。
ステップ3  
投資する資産を分散する。
ステップ4  
投資する時期を分散する。
ステップ5  
投資する金額にこだわる。
●  ステップ1の資産区分が基本
  ステップ1で金融資産を区分することは、資産運用において基本中の基本だ。
  元本保証がない株式・投資信託・外貨預金・変額年金などで運用する場合には、元本が割れてしまうことも考えられる。その際、個人のライフプランに大きな影響が及ばないようにするため、投資する資金を明確に区分しておく必要がある。
  具体的には、次の3つに区分する。
(1)流動性資金
  …生活資金や緊急予備資金など。いつでも使えるようにしておく。
(2)安定性資金
  …住宅購入などの目的で貯めておく資金。
(3)収益性資金
  …使用目的が特に明確化されていない資金。20〜30年後の老後生活資金の一部など。
  資産運用は、このうち「(3)収益性資金」に区分された資金で行う。この範囲を守れば、借金までして資産運用にのめりこんだり、投資に失敗して家屋敷を手放すなどといったことは起こらないだろう。
  裏を返せば、この区分をしないために失敗が起こるといえる。(ステップ1)が資産運用の基本といわれるゆえんである。
●  ステップ2〜4でリスクを軽減
  ステップ2〜4は分散投資・長期投資のことで、リスクの軽減効果を期待できる方法といわれる。
  分散投資とは、株式だけでなく、国内外の債券や外貨預金など株式とは異なる値動きの資産を保有し、株式相場の値動きだけに左右されない資産を構成できるというものだ。
  最近は不動産投信や個人向け国債などの発売により、より幅広く投資することができるようになった。数年前に比べ、分散投資の効果は大きくなっていると期待できる。
  長期投資は、値動きのある金融商品の購入時期を、数回に分けることである。これによって購入単価の引き下げが期待できる。
  加えて、短期間で解約して利益を狙うのではなく、5〜10年といった長期間のスタンスで運用を行うことも重要といえる。
  分散投資と長期投資という2つの基本を知ることは、商品の選択や保有期間の判断に大きく影響を与える。
●  ステップ5で投資金額をコントロール
  ステップ5では、投資する金額にこだわる。ステップ4までに比べると軽んじられることがあるが、実は非常に重要だ。
  次のケースを比較して考えてみよう。
(ケースA)  
運用成果がプラスマイナス10%の幅で変動する金融商品Aを、100万円買う
(ケースB)  
運用成果がプラスマイナス1%の幅で変動する金融商品Bを、1,000万円買う
  株や投資信託、外貨預金などは通常、運用成果の変動幅、つまりリスクの大きさだけで比較されることが多い。そのため、個人投資家に対しては「運用の変動幅が大きい金融商品Aは、金融商品Bに比べリスクが大きい」という説明がしばしばなされる。
  それは事実だ。しかし一方で、投資した資金の変動金額で言えば、どちらもプラスマイナス10万円で同額となるのも、また事実である。
(ケースA)  
投資資金100万円×変動幅プラスマイナス10%
=プラスマイナス10万円
(ケースB)  
投資資金1,000万円×変動幅プラスマイナス1%
=プラスマイナス10万円
  つまり運用成果の変動幅であるリスクの大きさを比較するにあたっては、同じ金額で投資することが前提となっているのだ。いくらリスクの小さい商品を選択しても、投資金額の選定をおろそかにすると、思わぬ結果を招く。
  言い換えれば、投資する金額にこだわることで、投資金額の変動幅をコントロールすることが可能となるということだ。その意味でも、ステップ5で投資金額にこだわることは、資産運用において重要なポイントといえる。
  資産運用の基本となる5ステップと、それ以降の手順は次の図の通りだ。
【資産運用の手順イメージ】
〔手順1〕基本の5ステップを確認
ステップ1  
金融資産を3つに区分する。
ステップ2  
投資する期間を、ある程度長期で考える。
ステップ3  
投資する資産を分散する。
ステップ4  
投資する時期を分散する。
ステップ5  
投資する金額にこだわる。
〔手順2〕個別銘柄・商品選択
〔手順3〕定期点検
年に1〜2回程度の現状分析・運用成果確認。必要に応じて商品の組み換え。
  「フリー・フェアー・グローバル」をスローガンに1998年から始まった金融ビッグバンで、個人投資家はさまざまな金融商品を購入する自由を手に入れた。一方で、常に自己責任を問われることにもなった。
  こうした激動の時代において個人が資産運用を行う場合、株式や為替などの相場観だけにとらわれて商品を選ぶのは得策ではない。商品選択以前の5ステップにこだわることこそ、個人投資家にとって資産運用の王道といえる。
2004.02.02
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