>  今週のトピックス >  No.768
国民年金、毎年、月額280円ずつ引き上げへ
  2004年の公的年金改革は、与党年金制度改革協議会で、国民年金の保険料を2005年4月から毎年、月額280円ずつアップすることで合意した。また厚生年金の上限保険料率についても、(現行は年収の13.58%を労使折半)18.30%でまとまった。これらを受けて、政府は今国会に提出する法案の閣議決定をすることとなる。注目されていた、パートタイマーへの厚生年金拡大は、5年後に再検討するということで見送られる形となった。
●  国民年金は、毎年3,360円ずつの負担増
  自営業者などが加入する国民年金保険料は、現在月額13,300円であるが、これを2005年4月から毎年月額280円ずつ引き上げることとし、2017年度以降は、16,900円を上限とすることでまとまった。当初、厚生労働省側からは、「毎年600円」という案が出ていたが、話し合いにより毎年280円ずつのアップということとなった。280円のアップといっても、毎年3,360円ずつ負担が増えることは確かであり、また夫婦共に国民年金の場合は、毎年6,720円の負担増となり、家計に少なからず影響を与えるに違いない。
●  厚生年金保険料率の上限は、18.30%で合意
  厚生年金については、負担上限を18.35%とすることで昨年末に合意していたが、さらに抑制し18.30%で合意した。しかしながら、最終決定までには、更なる話し合いの可能性もあるので目が離せないところだ。このままでいけば、保険料率は、2004年10月から毎年0.354%ずつ引き上げていくことになるのだが、同じ年収600万円でも2017年には、保険料は、約28万円もアップすることとなる。サラリーマン自身は、その半分の約14万円も負担が増えるわけだから、かなり厳しいことは事実である。最終的な給付について、現状では、現役世代の平均手取りの約50%が確保できるように設計されている。
●  パートタイマーの厚生年金の適用拡大は、見送りへ
  今回の年金改革の目玉であったパートタイマーの厚生年金の適用拡大案は、見送られる形となった。パートタイマーを多く雇用する業界関係者からの強い反発があったためだが、単なる問題の先送りではないかと思う国民も多いのではないだろうか。現在、パートタイマーなどの短時間労働者は増加し、雇用形態も多様化してきている。少子高齢化とともに働く人、すなわち「保険料を納める人」も少なくなっている。老後に厚生年金を受け取ることができない場合、国民年金の老齢基礎年金だけでは、満額を受け取ったとしても月額約66,000円(現在)ほどであり、生活していくには大変厳しい。
  結局、今回の改正では、保険料率と給付水準の数字の調整に終わり、将来の社会保障制度のことを考えた抜本的改革はできていないのではないだろうか。いずれにしても、パートタイマーの厚生年金の適用拡大については、5年後をめどに結論を出すと規定されることになりそうなので、今後注目していきたいところである。
(社会保険労務士  庄司 英尚)
2004.02.09
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