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裁判員制度の政府案まとまる
●  日本の司法制度に画期的大変革
  与党司法制度改革プロジェクトチームによる裁判員制度の導入案が明らかになった。この「裁判員制度」は、無作為に選出された市民が「裁判員」となり、裁判官とともに刑事裁判を行うもので、「裁判に時間がかかる」「判決がわかりにくい」といった問題を解決するための手段として期待されている制度である。
  与党PT案の骨子は次の通りである。
(1)
裁判員制度の対象は死刑または無期の懲役・禁固にあたる罪の事件に限る
(2)
評決要件は合議体の過半数による多数決とする
(3)
裁判体の構成を裁判官3人、裁判員6人(事件により裁判官1人、裁判員4人)とする
(4)
裁判員の対象を20歳以上の有権者から無作為に選出する
(5)
裁判員の守秘義務違反の罰則は懲役刑か罰金刑とする
  一般の市民が裁判に参加する制度としてはアメリカやイギリス、カナダなどで行なわれている「陪審制」とドイツやフランスなどで行なわれている「参審制」がある。
  「陪審制」の場合、一般市民の中から選出された陪審員が証拠に基づいて評議をし、被告人を有罪とするか無罪とするかを判断するが、量刑については裁判官が決定する。
  これに対し「参審制」では、一般市民の中から選出された参審員と裁判官との間に明確な役割分担はなく、有罪・無罪の判断や量刑などを参審員と裁判官とで合議のうえ決定する。
  日本では、昭和3年に施行された「陪審法」に基づき、陪審制による裁判が行われていた。「陪審法」は第二次大戦の激化により昭和18年に停止されたため、今回の与党PT案が成立すると実に60年ぶりに市民参加による刑事裁判が復活することとなる。
  今回の与党PT案は、当然のことながら戦前の陪審制度とは異なるものであり、司法に対して、法律論だけでなく市民感覚や社会常識といった要素を反映させることが期待されている。
  なお、裁判員制度の実施にあたり最も重要なのが、一般市民が容易に参加できる環境作りにあるといえる。裁判員に選出された市民は裁判期間中拘束されることとなり、特に重大事件では拘束期間が長期間に及ぶことも予想されるため、企業など職場の理解が得られるようにする環境作りが問題となる。与党PT案には“企業は従業員が裁判に出席するために休業を申し出た場合には拒むことができない”とする「裁判員休業制度」が盛り込まれてはいるが、法が整備されることと、実際に職場の理解が得られることは別の問題である。政府には裁判員制度の意義や目的について積極的なPRを行なって欲しいものである。
2004.02.09
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