>  今週のトピックス >  No.773
13年ぶりに前年を下回った失業率
●  調査結果と近年の推移
  1月30日に総務省が発表した、2003年12月の労働力調査結果によると、12月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と、前月比0.3ポイント低下した。このところ完全失業率は一進一退で推移してきたが、5%を下回るのは2001年6月以来2年6カ月ぶりとなった。また、2003年平均の完全失業率も、5.3%と、前年比0.1ポイント低下し、実に13年ぶりの低下となった。
  バブル崩壊後の日本経済は、現在を含め3回の景気回復局面を経てきたが、こうした循環的な景気回復によっても、完全失業率は趨勢的には悪化の一途をたどってきた。これは、短期的な景気の変動から発生する循環的な要因を上回る構造的な要因が、雇用に対して強く働いてきたことを意味する。しかし、今回の結果をみると、企業のリストラクチャーといった構造的な要因による雇用情勢の悪化にもようやく歯止めがかかった可能性もあると思われる。
●  悪化する若年層の失業率と、広がる地域格差
  とはいえ、内容を詳細にみると課題点も浮き彫りとなってくる。まず第一に、若年層の完全失業率は依然悪化傾向が続いている。65歳以上の高齢者を除けば、他の年齢層では軒並み完全失業率が低下したのに対し、15〜24歳の完全失業率は、2002年の9.9%から2003年は10.1%と悪化している。もともと、若年層の場合、転職志向が強く自己都合による失業が多く、企業が新卒採用を抑制する一方、即戦力としての中途採用を重視しつつある近年の傾向などもその背景として考えられる。
  第二に、地域ごとにみると、北海道と北関東・甲信越では、完全失業率の悪化に依然歯止めが掛かっていない。とりわけ、北海道では、2002年平均の6.0%に対して、2003年平均は6.7%と、0.7ポイントもの大幅な悪化となった。北海道経済の低迷は、地域の中核金融機関であった旧北海道拓殖銀行の破たんも要因とされるが、足利銀行の破たんという同様の状況におかれた北関東の地域経済の行方も懸念される。
●  カギは「個人消費の拡大」
  概して、輸出や設備投資主導で回復局面にあるとされる最近の景気ではあるが、最大の需要項目である個人消費が盛り上がりを欠く中では、景気回復の持続性が危ぶまれるだけに、個人消費に関係が深い雇用情勢の行方が注目されるだろう。
【図表 地域別完全失業率】
(単位:%)
 
全国
北海道
東北
南関東
北関東
・甲信
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州
1993年
2.5
2.9
2.1
2.8
1.9
1.6
2.0
3.0
2.2
2.3
2.9
1994年
2.9
3.2
2.5
3.3
2.0
1.9
2.5
3.5
2.2
2.8
3.1
1995年
3.2
3.2
2.6
3.5
2.2
2.3
2.6
4.0
2.4
2.8
3.3
1996年
3.4
3.8
3.0
3.7
2.4
2.3
2.8
4.1
2.9
3.2
3.7
1997年
3.4
3.8
2.9
3.8
2.5
2.6
2.7
4.0
2.7
3.2
3.8
1998年
4.1
4.9
3.9
4.5
3.0
2.9
3.3
4.9
3.4
3.7
4.6
1999年
4.7
4.9
4.2
5.1
3.6
3.5
3.9
5.6
3.9
4.1
5.0
2000年
4.7
5.5
4.4
4.8
3.8
3.6
3.7
5.9
3.9
4.1
5.4
2001年
5.0
5.9
5.0
4.9
4.1
3.9
4.1
6.3
4.2
5.1
5.6
2002年
5.4
6.0
5.9
5.4
4.4
4.0
4.1
6.7
4.3
5.2
6.1
2003年
5.3
6.7
5.6
5.1
4.6
4.0
4.0
6.6
4.3
4.8
5.9
(注)
北海道:北海道
東北:青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島
南関東:埼玉、千葉、東京、神奈川
北関東・甲信:茨城、栃木、群馬、山梨、長野
北陸:新潟、富山、石川、福井
東海:岐阜、静岡、愛知、三重
近畿:滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
中国:鳥取、島根、岡山、広島、山口
四国:徳島、香川、愛媛、高知
九州:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
2004.02.16
前のページにもどる
ページトップへ