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管理職能力の獲得の現状
  サラリーマンが管理職として必要とされる職務遂行能力と獲得プロセスについて、管理職本人はどのように考えているかをアンケート調査した報告がある(注)
●  管理職の要件
  まず管理職は自己の能力のどの点を優れていると評価しているのだろうか(図表1)。
  調査結果では「責任感・目的達成意識」および「業務遂行能力・実行力」について、過半数の管理職が優れていると答えている。そのほかに、「対人関係調整力」、「判断力」にも自信があるようだ。裏返せば管理職は、組織の長としての責任感と与えられた職務を遂行しきる力を持ち、さらに社内・社外との折衝を行えることが要件なのであろう。なお、ほとんどの能力項目において、男性は女性以上に自信を持っていることがわかり、興味深い。
【図表1 職務遂行力の自己評価(「優れている」、「やや優れている」の回答割合、複数回答)】
能力項目
男性の回答
女性の回答
責任感・目的達成意識
70.8%
75.3%
業務遂行能力・実行力
60.2%
59.4%
対人関係調整力
50.2%
45.3%
判断力
50.7%
42.5%
交渉力
46.1%
37.2%
専門知識や高い技能・技術
47.9%
38.7%
リーダーシップ
37.8%
35.9%
幅広い知識・教養
35.9%
23.5%
変革力・創造力
34.3%
27.5%
部下指導力
32.7%
29.6%
説得力・論理構築力
41.2%
31.7%
企画力・開発力
33.2%
26.8%
  次に、いかにしてそれぞれの職務遂行能力を獲得したかを尋ねているが、やはり、“仕事上の経験”によって獲得したとする回答がすべての能力において多く、特に「専門的知識や高い技能・技術」の獲得においては男女とも6割以上である。「業務遂行能力・実行力」「企画力・開発力」「判断力」でも仕事上の経験により獲得したとする割合は高い。そのほかの獲得手段としては、「専門知識や高い技能・技術」は個人的に勉強したものも多い。「部下指導力」や「交渉力」は"上司や同僚を見て"獲得している。
  仕事上の経験を積むためのジョブローテーションについては、経験回数をみると「なし」は女性が21.7%、男性が12.4%にすぎず大部分が配置転換を経験している。しかし「回数4回以上」になると女性が30.9%、男性が48.1%、転居を伴う配置転換は、女性の「あり」13.4%に対し、男性の「あり」は43.2%である。配置転換は人材育成の重要な手段であるが、男女差があり、男性の方が多くの配置転換や転勤を経験している。
  管理職の能力獲得には、上司の影響も大きい(図表2)。影響や学んだことは「方向性を示すことの重要さ」、次いで「指示の仕方の適切さ」、「人の使い方」が多く、男女とも過半数を超えている。反面教師として学んだ面も大きいのかもしれない。上司は部下に見られていることが実感できる回答結果である。
【図表2 上司からの影響や学んだこと(複数回答)】
 
男性の回答
女性の回答
方向を示すことの重要性
67.2%
64.4%
指示の仕方の適切さ
55.7%
59.7%
人の使い方
54.8%
50.5%
部下の育て方
43.4%
42.5%
人間関係の作り方
40.5%
39.9%
人のほめ方
32.6%
35.3%
責任の取り方
23.0%
27.1%
その他・無回答
6.9%
12.0%
  この調査結果で浮かび上がるのは、人材育成が相変わらず基本的に本人に任せられている実情である。仕事をやり遂げたり上司の指示を受ける過程において、仕事における重要な何かに気づいた社員だけが管理職となっていく。きわめて非効率的である。人材育成は会社の存亡の鍵である。配置転換や自己啓発支援だけでなく、今、注目を集めているコーチングなども含め、効率的かつ科学的な人材育成が求められるのではないだろうか。
(注)
財団法人21世紀職業財団が企業で働く男女管理職を対象に行ったアンケート調査
(2003年8月発表報告)
(可児俊信、CFP®、DCアドバイザー、米国税理士)
2004.03.01
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