>  今週のトピックス >  No.783
負担増えつづける企業の福利厚生費
  2002年度の福利厚生費の実績調査がまとまり、その概要が報告された(注)。従業員に対する企業の福利厚生費の負担額はどうなっているのだろうか。
●  広い意味での人件費負担
  企業は、従業員に対して給与・賞与の他に、退職金・企業年金、福利厚生などの費用を負担し、合わせて広い意味での人件費と認識されている。うち福利厚生費は法律に基づき企業が負担する法定福利費(法定内福利厚生費ともいう)と、企業が任意で行う法定外福利費に分けられる。法定福利費はそのほとんどが社会保険料の会社負担分であり、一方、法定外福利費は、社宅・家賃補助などの住宅関連、保養所などのレジャー関連、従業員の医療健康・自己啓発などを目的に支出している。
  2002年度において企業が負担した福利厚生費は、従業員一人当たりに換算して月額96,755円(前年度比0.9%の微増)であった。内訳は、法定福利費が68,552円、法定外福利費は28,203円である。法定福利費は厚生年金保険料が36,082円と過半を占めている。健康保険・介護保険が23,572円と残りの大部分を構成している。
  一方、法定外福利費の内訳はその半分以上の14,456円が住宅関連であり、医療健康関連が2,700円、給食関連が2,478円、文化・体育・レクリエーション関連が2,337円と続いている。
●  避けられない企業の人件費抑制対策
  年収(月例給与と賞与・一時金との合計)を12等分した金額を月額現金給与として定義すると、月額現金給与に対する福利厚生費の割合は、17.3%となる。同じく退職金・企業年金費用は月額現金給与の15.6%となっており、企業は現金給与以外にその32.9%に相当する人件費を負担していることになる。
  図表は、月額現金給与に対する福利厚生費の割合の推移である。30年前の1972年度調査では、11.8%であったが、1982年度調査では13.9%、1992年度では15.8%、そして2002年度は17.3%と右肩上がりで高まっている。その理由は図表でわかるとおり法定福利費の増加、つまり社会保険料率の上昇である。とりわけ厚生年金保険料の料率の持続的な上昇の影響が大きい。
  一方、法定外福利費は、かつては法定福利費と同水準であったが、その後は現金給与に対する割合はほぼ横ばいに推移しており、月額現金給与の5%台で推移している。
【図表 月額現金給与額に占める福利厚生費の割合の推移】
【図表 月額現金給与額に占める福利厚生費の割合の推移】
  今後も法定福利費の負担増は避けられないのは確実である。企業は、カフェテリアプランなどの福利厚生費管理手法などを用いて広い意味での人件費を総額でコントロールすることが、企業存続の要件の一つといえる。
(注)日本経団連「第47回福利厚生費調査」2004年1月発表
(700社の企業から回答。回答企業の1社あたり従業員数3804人)
(可児俊信、CFP®、DCアドバイザー、米国税理士)
2004.03.08
前のページにもどる
ページトップへ