>  今週のトピックス >  No.787
在宅での終末期を支えるもの
〜カギは第三者評価の進展にあり〜
   最近、介護現場を取材している中でよく話題となるのが、ターミナルケア(終末期介護)をめぐる様々な障壁である。
●  現場が抱える問題
  例えば、ある在宅介護の現場では、家族が「要介護者をわが家でみとりたい」と希望している。ところが、いざ「最期を迎える」時の手はずをあらかじめ整えようとすると、医療・看護・介護ともに尻込みをしてしまうケースが大半なのだという。
  「24時間対応」をうたっているクリニックでも、夜間は電話対応のみで訪問はしないという所が多い。医療職が動かなければ、医療行為のできない介護職は夜間の救急病棟などに頼らざるをえない。必然的に、「いざという時」は救急車を呼ぶことになり、結局「わが家で最期を迎える・みとる」という希望は叶えられないことになってしまう。
●  国民およびグループホームの意識
  昨年12月、厚生労働省が終末期医療に関する意識調査の結果を公表した。特に注目されたのは、「自分自身が高齢で不治の病にかかった時、望ましい療養場所はどこか」を一般国民に対して問う設問である。
  調査が実施されたのは2003年2月から3月にかけてであり、介護保険がスタートして3年を経過し、厚生労働省も「施設から在宅へ」を強く打ち出していた矢先である。にもかかわらず、前述の質問に対しての回答は「一般病院」が38%、「介護療養型施設など長期医療型病院」が24.8%。実に6割以上の人が、「自宅以外」を希望したわけだ。これは5年前に行われた同調査の結果と大差はない。いかに「在宅で最期を迎える・みとる」という点に関して、受け皿づくりが遅れているかをはからずも示してしまったことになる。
  実は、今年に入ってから、「在宅でのターミナルケア」に関してもう一つ興味深い調査が行われた。自宅ではないものの、在宅と区分される痴ほう性高齢者のグループホームを対象とした調査である(対象:全国1,192事業所)。これによれば、「ターミナルケアに取り組んだ経験のある事業所」は8割以上にのぼる。一方で「制度上条件が整えば(終末期を)援助したい」、および「ケースごとに条件を考えながら前向きに援助していきたい」という回答の総数は7割近くにのぼった。つまり、当のグループホーム側には、「やったことはないが、今後は前向きに取り組みたい」という意欲が強いのである。
  このことは、介護報酬改定によってグループホームの夜勤加算が認められたことも大きく影響している。だが、それ以上に指摘したいのは、介護保険がスタートして4年目に突入する中で、入居者の高齢化・重篤化という問題が避けられなくなっているという点だ。
  グループホームの場合、その人が高齢化し、要介護度が極端に上がった際に、簡単に施設や病院に送ってしまうことは、ホームの存在意義そのものを問われてしまう。現在、介護サービスの中で第三者評価が義務づけられているのは、グループホームだけ。それだけ事業者側はケアの質を意識せざるをえず、存在意義を問われるか否かという問題に敏感になってきたとも言える。
●  今後の展望
  つまり、その他の介護・医療サービスにおいても、第三者評価という仕組みを導入することが、ターミナルケアへの認識や議論を深めるきっかけになるわけだ。確かに「在宅ターミナルの受け皿」が完全に整備されるまでには相応の時間はかかる。だが、来年度からすべての介護サービスに義務づけられる第三者評価が、大きな一歩となるのは間違いない。
(医療・福祉ジャーナリスト  田中 元)
2004.03.15
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