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シェアードサービスの現状
●  目的は業務の効率化と高度化
  ビジネス・ドメインの「選択と集中」、さらにコア・コンピタンスへの経営資源の集中が求められるなか、シェアードサービスという手法が注目されている。企業において総務・人事・経理などの間接業務は、各社類似した業務フローでオペレーションされている。そこで企業グループ内各社の間接業務を切り出して1カ所のシェアードサービスセンターに集約し、その専門性を高め、それにより業務の効率化と高度化を図ろうとするリストラクチュアリングがシェアードサービスである(図表)。切り出しの過程で各社の間接業務を標準化することで効率を高めることができる。もちろん明確な定義はなく、これは最大公約数的表現である。
【図表 シェアードサービスセンターの設立】
【図表 シェアードサービスセンターの設立】
  こうした手法は以前から存在していた。80年代に行われてきた、企業の間接部門を別会社として切り離す「スピンオフ」がそれである。90年代は「アウトソーシング」として、システム部門などの業務が専門性の高い外部業者に委託されるようになった。そして今、「シェアードサービス」である。
  スピンオフが効率化を目指した親会社組織の切り離しであったのに対し、シェアードサービスはグループ各社の組織・業務の切り離しとグループ内での集約である。またアウトソーシングは業務高度化を狙った外部委託であるが、シェアードサービスはグループ内への委託である。こうした観点からシェアードサービスは、スピンオフとアウトソーシングの発展形と位置付けられる。
●  現状は道半ば
  シェアードサービスに取り組んでいる企業グループは、NEC、コクヨ、凸版印刷、オムロン、NTT、パイオニア、帝人など200社以上と推定される。企業研究会が2003年12月に実施した調査によれば、シェアードサービスセンターの平均像を見ると、設立目的「グループの間接コストの削減」「間接業務の業務品質向上」、設立後経過年数4年未満、従業員数20名程度、従業員のうち本社からの出向者比率70%以上、設立によるコスト削減効果は平均17%、グループ外からの受託実施は19%となっている。
  この結果を見る限り、シェアードサービスセンターは設立後日が浅いこともあり、まだまだ十分な実績をあげるに至っていないようだ。本社からの出向者の多い高コスト体質のままで、かつグループ各社から受託した業務の標準化が進んでいないということであろうか。
  スピンオフやアウトソーシングの発展形ともいえるシェアードサービスであるが、魔法の杖となって効率化や高度化で成果を生み出すには、型どおりに止まらない魂の入った取り組み方が欠かせないようだ。
(可児俊信、CFP®、DCアドバイザー、米国税理士)
2004.03.15
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