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パートタイム労働者への厚生年金適用拡大見送られる
  2月上旬に国会に提出された年金改革法案で、パートタイム労働者(以下、パート労働者)への厚生年金の適用拡大が見送られた。厚生年金の加入者増加を見込んだ厚生労働省が適用拡大を提案していたが、保険料の半分を負担する産業界が猛反発した。現在の経済環境ではパート労働者や雇用先企業の保険料負担が重く、実施は難しいと与党協議で導入が先送りされた。ただし5年後をめどに再検討される。
  現在、厚生年金の適用対象となっているのは労働時間が正社員の約4分の3以上、つまり週30時間以上の勤務実態のあるパート労働者に限られている。厚生労働省はこれを週20時間以上に繰り下げ、約300万人の新規加入を見込んでいた。保険料の負担層を広げると同時に、同じ企業の従業員のなかで働き方の違いによって年金制度に差がある状態を解消させる狙いがあった。
●  産業界猛反発
  しかしパート比率の高い流通業を中心に反発が起きた。例えば大手スーパーでは従業員の4人に3人の割合でパート労働者を活用する企業がほとんどである。意欲あるパート労働者を店長や売り場責任者に抜てきするなど人件費の削減に取り組んでいる。パート労働者に厚生年金の適用が拡大されれば、こうした企業努力が無になりかねない。日本チェーンストア協会など16団体や全国中小企業団体中央会など中小企業3団体が反対運動を展開した。
  結局、産業界の抵抗を受け、法案では現行の厚生年金適用の条件を5年間変えないことにした。年収130万円未満で会社員・公務員に扶養されている配偶者であれば、保険料負担なしで基礎年金が受給できる点も現行制度と同じだ。
●  加入企業5年連続減
  ただ気掛かりなのは厚生年金に加入する企業の減少が続いていることである。社会保険庁がまとめた2002年度末の加入事業所は約163万で、前年度末に比べ約2万事業所の減少となった。減少は5年連続で、ピークの1997年度比では約7万も減少した。企業倒産の増加などが主な原因だが、保険料負担を嫌った企業が加入を逃れるケースも少なくないようだ。
  厚生年金はすべての法人や従業員5人以上の事業所に加入義務があり、従業員の年収の13.58%を保険料として労使折半で国に納める。この負担を回避するため、一部の企業が厚生年金から脱退しているようだ。厚生年金保険法には加入義務の違反に対して罰金などの罰則はあるが、適用された例はほとんどない。
  パート労働者への厚生年金適用拡大が見送られ、当面加入者が増える要因は見当たらない。年金給付の増加に対し、保険料負担者の減少という空洞化が進行している。
2004.03.15
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