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確定拠出年金のポータビリティー
●  企業型確定拠出年金の現状
  2001年10月から始まった企業型確定拠出年金は、2月末現在で承認規約数707件、実施企業数2,007社まで普及した。規約数と実施企業数が異なるのは、同一の規約に基づいて複数の企業が実施できるためである。また2002年1月から始まった個人型の加入者数は2月末で26,743人まで広がっている。なお、企業型は会社が掛金を負担するタイプ、個人型は加入者自身が掛金を負担するタイプである。
  今年は掛金の拠出限度額の増額も予定されているうえ、株式市場も上昇基調とみられることから承認規約数は1,000件の大台を突破すると見込まれる。
  確定拠出年金はこれまでの企業年金にない特徴として、
  1. 年金資産が加入者ごとに分別管理されている
  2. 加入者が年金資産を運用する義務があり、運用リスクは加入者自身が負う
  3. その結果、将来の年金額は受給時まで確定しない
  4. 分別管理されているため加入者個人分の年金資産にポータビリティーがある
が挙げられる。
●  年金資産の移動に関する問題点
  その中で分かりにくいのはポータビリティーである。これは、確定拠出年金に加入している加入者(従業員)が転職した場合、自分の年金資産を転職先に持ち運べる仕組みである。雇用の流動化に対応した機能ではあるが、実際は意外と複雑である。加入者(従業員)の転職先の状況によって、年金資産の行き先や掛金拠出者などが複数のパターンに分かれてしまう。図表はそれを転職ケース別に示したものである。
  確定拠出年金の現在の実施状況を見る限り、転職先に企業型確定拠出年金がある可能性は低い。また転職先に企業年金も確定拠出年金もなければ、個人型確定拠出年金加入者となって自ら掛金を拠出して積み立てを継続できる。困るのが転職先に企業年金はあるが企業型確定拠出年金がないケースである。企業年金がある従業員は個人型確定拠出年金の加入者になることができない。そのため転職者は新たに掛金を拠出できず、これまでに積み立てられた年金資産を運用することしかできない。
  確定拠出年金が雇用流動化社会のインフラとして機能するのは、ほとんどの企業が確定拠出年金を実施しているという状況が実現した後のこととなる。
【図表 転職ケース別確定拠出年金の継続方法】
転職ケース
年金資産の移換先
掛金の拠出
年金資産の運用
転職先に企業型確定拠出年金がある
転職先の確定拠出年金
可(会社拠出)
転職先に確定拠出年金はないが企業年金がある
国民年金基金連合会
不可
転職先に確定拠出年金も企業年金もない
可(加入者拠出)
独立し、国民年金第一号被保険者となる
備考:企業年金とは、厚生年金基金、キャッシュバランスプランを含む確定給付企業年金、適格退職年金を指す(中退共は企業年金とはみなされない)
(可児俊信、CFP®、DCアドバイザー、米国税理士)
2004.03.29
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