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60歳代以上の世帯に対する資産運用提案
  日本の個人金融資産残高は、約1,400兆円(世界第2位)で、その約半分以上が60歳代以上の世帯に保有されているといわれている。そこで今回は、年間収入(以下フロー所得)と金融資産(以下ストック)の現状を見ながら、60歳代以上の世帯に対して、今後ニーズが高まる可能性がある資産運用提案について考えてみる。
●  保有金融資産の年代別推移
  まず、60歳代以上のフロー所得の現状はどうなっているのだろうか。総務省統計局発表の「家計調査年報」によれば、勤労者の収入のピークは50歳〜54歳の世帯となっており、それ以降の世代は逓減していく傾向がある。一般的に気力・体力から考えても就労による収入を期待できる年齢は60歳〜65歳までであろう。そして、60歳以上の世帯収入の主役は、公的年金へとシフトしていく。つまり、60歳以上の収入のメインは公的年金であり、勤労収入を考慮したとしても、その額は現役時代を下回るケースが一般的といえるであろう。
  次に、60歳代以上の世帯のストックはどうなっているのかを検証してみる。一世帯あたりの貯蓄保有額は下表のように、20歳代以降、年齢を重ねるごとに逓増していく。その結果、60歳代で1,900万円超、70歳代においては、2,000万円超となり、40歳代の実に約2倍程度も保有している。
【図表 2003年世帯主年齢別保有金融資産】
(単位:万円)
平均
20歳代
30歳代
40歳代
50歳代
60歳代
70歳代以上
1,460
453
596
1,048
1,514
1,938
2,066
出典:「金融広報中央委員会 家計の金融資産に関する世論調査」
  以上から、60歳代以上の世帯は、フロー所得が現役世代に比べ低い一方で、ストックについては現役世代を上回る額を有しており、一般的には現役世代より余裕があると考えられる。
●  社会保障制度改正で広がる不安と資産運用に関するニーズ
  しかし、最近、この世代にも老後生活に大きな不安が広がり始めている。その理由の代表格は何と言っても社会保障制度の改正であろう。例えば、デフレによって消費者物価指数が前年費マイナスとなったため、昨年4月から公的年金支給額が引き下げとなった。つまりこの改正でフロー所得が減少となったのである。また医療保険制度改正によって、全年齢に医療費定率負担が導入(70歳以上は1割・70歳未満3割)され、医療費も負担増となっている。これもフロー所得の減少となる可能性がある。このように最近の社会保障制度改正が60歳代以降の生活に関する不安を増加させているのである。
  今後、ニーズが高まっていく資産運用提案のヒントは、このフロー所得の減少に隠されているといえるであろう。不安要素であるフロー所得を、資産運用によってどのようにアップさせていくかという提案がニーズにマッチしていると考えられる。言い換えれば、預貯金などの低金利によってまったくと言っていいほどフロー所得を生み出していない金融資産を、フロー所得のアップを狙う金融商品へシフトさせるという提案である。フロー所得をアップさせる具体的な金融商品は、毎月分配金および利息が支払われるタイプの株式投資信託、不動産投資信託、そして外貨預金などが考えられる。すでに発売されているそれらの金融商品は、最近急速に残高を伸ばしている。特に国際投信のグローバルソブリンオープン毎月分配型は、公募投資信託の中で最も純資産残高(3月17日現在で2兆8,000億円)を保有している点からも、フロー所得のアップというニーズがかなり高いことの証明といえるであろう。
  高齢社会到来が急速に進展する日本において、いかにフロー所得を増やすか、そのためにいかにストックを有効活用するかという資産運用提案が、今後ますます注目を集めることは必至といえるであろう。
2004.03.29
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