>  今週のトピックス >  No.799
21世紀企業の賃金のカタチ
  企業収益が急回復しているなか、これまでとは異なる21世紀企業の賃金・退職金・福利厚生などの報酬体系が見えてきた。
●  人件費の抑制続く
  財務省発表の2003年10月〜12月期の「法人企業統計調査」によると、企業の設備投資額は前年同期比5.1%増、製造業に限れば15.0%と2桁の伸びである。また企業規模別では、資本金1億円以下の小規模企業が18.4%増と設備投資に積極的である。
  また同期間の企業の売り上げは、3.1%増、経常利益は16.9%増と大きく伸びている。一方、人件費は0.4%増に止まった。このことは企業業績が回復に向かっても賃金増には結びついていないこと、または賃金を抑えることで経常利益の「V字回復」が実現したことを表している。
  また厚生労働省発表の「賃金構造基本統計調査(2003年6月調査)」によると、男性の一般労働者の平均賃金は、前年比0.2%減の335,500円であった。さらに年代別に賃金の増減を見ると、20代前半が1%増となったのに対し、50代前半が1.7%の減少と、年代別ではもっとも減少幅が大きかった。これは、年功型賃金体系の見直しが進んでいるためと思われる。
  一方、今年の春闘は、ベースアップはほとんど要求されなかった。代わりに賃金水準の維持・向上は賞与・一時金の増額によることとなった。またメンタルヘルスなどの賃金以外の労働条件に目を向ける動きもあった。勝ち組、負け組みが鮮明になったことで業種ごとでベースアップを争う従来の春闘はありえないのかもしれない。
  また、90年代の後半から続いている成果主義への移行傾向は確実に進んでいる。その表れのひとつが手当の廃止である。NECが7月から配偶者手当を廃止し代わりに育児手当を支給するとのことだが、ソニーも4月から扶養手当、住宅手当を廃止するなど、仕事上の成果と連動しない手当は姿を消している。
●  新しい報酬体系のカタチ
  こうした動きから21世紀型報酬のカタチが見えてくる。報酬は、賃金(給与・賞与)のほか、退職給付、福利厚生の3つで成り立っている。
  まず賃金は成果主義が定着したといえる。つまり定期昇給はなくなり、長く勤めさえすれば昇給していくことはなくなった。またベースアップも消える方向にある。企業は収益が上がっても、ベースアップではなく単年度の費用増で済むことから、賞与での一時金で社員に報いることになる。20代、30代前半まではそれなりの昇給はあるものの、管理職昇格以降は、成果をあげて昇格しなければ給与のベースがあがることはない。
  退職給付は、これまでの勤続年数と最終給与に基づいて将来の給付を企業が保証するものから、キャッシュバランスプラン、確定拠出年金に代表されるような現在の掛金拠出を企業が保証するものに切り替わっていく。
  福利厚生についても、自己啓発や健康増進などの仕事に関連性の深い分野が重視されていくだろう。
(可児俊信、CFP®、DCアドバイザー、米国税理士)
2004.04.05
前のページにもどる
ページトップへ