>  今週のトピックス >  No.804
浸透する成果主義
●  職能資格給から役割・職務給へ
  本トピックス799にて、「21世紀企業の賃金のカタチ」として、「成果主義の定着・定期昇給の廃止・ベースアップの消滅」などを報告したが、(財)社会経済生産性本部から、それを裏付ける「日本的人事制度の変容に関する調査結果」が発表された。
  まず、賃金の昇降給について、「能力や成果に応じて格差があり、ゼロ昇給や降給もありうる」との回答が、管理職層の賃金に対しては66.9%、非管理職層でも51.8%にのぼっている。定期昇給については、「従業員の生活の安定の確保」が54.5%、「労働意欲の向上」が28.2%、「賃金決定ルールの明確化」が25.0%などと、その意義は認められている。しかし、定期昇給を「近い将来、廃止予定」とする回答が27.6%を占めるなど、賃金が定期的に上昇する可能性はどんどん少なくなっていく。
  賃金体系については、これまでの主流だった職能給制度(職能資格制度にもとづく能力主義的賃金体系)は2000年以降減少傾向にあり、一方で役割給・職務給が急速に普及している(図表)。管理職についてみると、99年では職能給が80.8%、役割・職務給が21.1%であったが、2003年では職能給が60.6%、役割・職務給が53.4%とほぼ拮抗(きっこう)する段階にまできている。
【図表 職能給、役割・職務給の導入状況】
【図表 職能給、役割・職務給の導入状況】
出典:「(財)社会経済生産性本部 第7回 日本的人事制度の変容に関する調査」
●  部門業績の処遇への反映
  基本給部分が役割給・職務給となるにつれ、実績給部分は成果を反映したものが増えてくる。賃金や賞与の業績反映部分に、所属している部門の業績を反映している企業は、40.6%となっており、2001年調査時の31.0%より、10ポイント増加している。部門の業績を反映させている企業では、管理職層の処遇に反映させているのが97.3%、中堅層でも64.3%、一般職層では53.6%となっている。
  こうした成果主義型の賃金体系を持つ企業では、評価に対して従業員が納得するような制度や仕組みが併せて導入されている。まず苦情処理制度である。これは成果主義的な処遇を行う企業の48.9%で導入されている。また管理職への多面評価(部下が上司である管理職を評価する)については28.3%の企業が導入している。コンピテンシー(具体的な行動特性などで評価基準を示したもの)で評価基準を示す企業は32.6%にのぼる。
  この調査結果に見るようにいわゆる成果主義型の賃金(職能資格給制度ではなく、定期昇給がなく、業績連動型の賃金)は、確実に浸透し始めている。成果主義型賃金の導入にあたっては、従業員の納得と評価の公平性が不可欠である。苦情処理制度、上司の多面評価、コンピテンシーなどの評価基準とセットで導入されるのが望ましい。
回答企業251社、2003年11月から2004年1月にかけて調査
(可児俊信、CFP®、DCアドバイザー、米国税理士)
2004.04.12
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