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21世紀の退職金制度
●  日本経済の発展と退職金制度の歩み
  給与・賞与や福利厚生と並び、従業員への重要な報酬として位置付けられるのが退職金である。
  退職金制度は、江戸時代の商家の「のれん分け」に端を発するとされる。明治時代に入り、隆盛を極めた紡績業などが大量に従業員を確保する必要があった。その際に労働条件の魅力付けとして退職金制度が採用された。しかし当時の退職金制度は、在職中に従業員に強制貯蓄をさせ、退職時にそれを含めて退職金を支払うという足止め策の側面も強かったようだ。
  大正時代に入り日本が世界大恐慌に巻き込まれた際は、失業手当または手切れ金として、退職手当・解雇手当が支払われるようになった。
  こうした経緯と労働運動の高まりから1936年には、退職金の支給が法的に義務付けられるに至った。この法律は第2次世界大戦末期の1944年に消滅したが、退職金制度は戦後の企業にしっかりと根付いた。
  朝鮮戦争の好景気に沸く1952年には、所得税では退職所得控除、法人税では退職給与引当金が新設され、退職金は税制上非常に優遇されるに至った。
  このように退職金制度は、日本経済の発展とともに確固たるものとなっていった。生命保険文化センター発表の「平成14年度企業の福利厚生制度に関する調査」によると、74.3%の企業に退職一時金制度が普及している。退職金額(企業年金移行部分も含む)の平均額は、1,540万円である。
  このように定着した退職金制度であるが、21世紀に入る直前から大きな変化が現れ始めた。
●  急速に進む退職金制度の見直し
  まず、平成14年度から退職給与引当金は4年間(中小法人は10年間)の移行期間の後、廃止されることとなった。また、成果主義の流れの中で、退職金自体を廃止する企業も増えている。また確定拠出年金やキャッシュバランスプランのように、従来のような確定給付型の退職給付額算定方式にあてはまらない企業年金も登場している。退職給付会計の導入の影響もあるだろう。こうした流れのなかで、企業は図表に示すように退職金制度の見直しを不断に進めている。
【図表 退職金制度の見直し内容】
【図表 退職金制度の見直し内容】
出典:「(財)生命保険文化センター 平成14年度企業の福利厚生制度に関する調査」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2004.04.26
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