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資産運用アドバイスについて
●  資産運用の基本
  日本経済を昨年同時期と比較すると、悲観的なムードが後退し、幾分明るさが出てきていることはご存知のとおりである。そのため、「今年こそは資産運用にチャレンジしてみよう!」と考えた顧客から、資産運用に関する相談を受ける機会が増加する可能性がある。そこで今回は、プロではなく通常の個人向けに資産運用のアドバイスを行う場合の基本事項を改めて考える。
  資産運用の基本は、実は至ってシンプルであり、
  1. 分散投資(投資銘柄、購入通貨、購入時期を分けること)
  2. 長期投資(極力、短期間で売買を繰り返さないよう心がけること)
の2点に尽きるといえる。つまり「いろいろな資産(株や債券など)を、何回かに分けて購入し、それを長く持つように心がけること」なのである。
  では、運用資金がある程度限られている個人投資家において、上記の基本事項を実践することは現実的に可能なのであろうか。
●  運用資金が限られる個人投資家の資産運用方法
  外貨投資の場合、最近ではユーロ・豪州ドル・カナダドル・英国ポンドなどUSドル以外の外貨預金、外貨建MMF、海外債券が発売されており、いろいろな通貨を購入することは十分可能といえる。また、投資信託の場合、投資対象として従来の株や債券に加え、最近では、米国の不動産へ投資を行うREITファンドや中国株へ投資するチャイナファンドなども発売されており、その点から考えれば、投資信託を活用することで、株・債券そして不動産に投資対象の分散が可能となっている。このことから個人が「いろいろな資産を購入する」ことも十分可能といえるであろう。
  次に「数回に分けて購入」することは可能であろうか。運用資金が限られた個人において、いろいろな資産を「数回に分けて購入」するためには、購入商品の最低購入金額が重要になる。つまり、その商品の最低購入金額が低ければ低いほど、いろいろな資産を「数回に分けて購入」できることになる。最近の投資信託や外貨預金・外貨MMFなどは通常、1万円前後から購入加入となっているものが多く、仮に、国内債券・国内株式・海外債券・海外株式・外貨(USドル)・外貨(ユーロ)の6種類の資産を保有する場合であっても、6万円程度から保有可能となる。もし2回に分けて購入する場合には合計12万円、3回で18万円程度の運用資金で「数回に分けて購入」することができるのである。その点からいえば、「いろいろな資産(株や債券など)を、何回かに分けて購入する」ということは、十分実践可能といえる。
  「長く持つ」ことはどうであろう。「投資した資金の保有期間」は、その資金の使途に大きく左右される。そのため、住宅購入資金・生活資金・車の購入資金など使途が決まっている資金で投資を行ってしまえば、必然的に保有期間が限られてしまう。さらに元本割れとなった場合も、資金の使途が決まっていれば、少しでも損失を拡大させないように、早めに売却されてしまう可能性が高い。つまり使途が決まっている資金で投資を行えば、その投資金額にかかわらず「長く持つ」ことは難しくなるということである。逆に、使途が明確化されていない資金の範囲内で投資を行うことが「長く持つ」ことの秘けつといえる。つまり、使途が明確化されていない資金を洗い出し、その金額の範囲内で運用すれば「長く持つ」ことも十分実践可能といえる。
  以上のことからも明らかなように、運用資金が限られている個人投資家であっても、資産運用の基本事項である分散投資と長期投資を実践すること自体は十分可能といえる。しかし残念ながら実際のセールスの現場では、「特定の売れ筋商品」へ極端に偏ったセールスや、通常の個人には高額と思われるような金額を一度に販売しているケースも多く、その結果、個人が基本事項を十分実践できているかは疑問である。ましてや日本株などの相場環境が好転している現在では、ますます基本事項の実践がおろそかになる傾向が強まるであろう。
  顧客を取り巻く環境がそのような傾向を強める中、「末永く付き合いたいと思う顧客」から「資産運用」について相談を受けた場合は、「いろいろな資産(株や債券など)を、何回かに分けて購入し、それを長く持つ」という基本事項に重きをおいたアドバイスに徹したいものである。
2004.04.26
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