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「良心に反する仕事でも指示には従う」が4割を超える
  財団法人社会経済生産性本部が4月26日に発表した「第15回 2004年度新入社員意識調査」の結果によると、「自分の良心に反する仕事でも、会社のため指示の通り行動する」と答えた新入社員の割合は90年の調査開始以来はじめて4割を超え、倫理面での悪化傾向がうかがえる。また、年齢や経験によって給料や昇格が決まることを希望する割合が増加傾向にあり、どちらかというと安定志向の新入社員が増えてきていると分析することができる。
●  「指示の通り行動する」が増加
  今回の意識調査の中で特に目立った点として、「上司から会社のためにはなるが、自分の良心に反する手段で仕事を進めるよう指示された」時に、「あまりやりたくないが、指示の通り行動する」とした人が過去最高の43.4%と増加したことがあげられる。逆に「できるだけ避ける」とした人は、前年は46.3%であったが、今年は40.8%と大きく減少している。この調査結果から判断すると、会社への忠誠心が高まっているといえるが、法的に違反している仕事に自分が関与していても、自分の意見をきちんと言えず、また当然ながら内部告発などをすることもできず、悩みを抱えてしまう人が増加する不安が残る。この調査結果を踏まえて、各企業は、新入社員の意識を変える努力をする必要があるし、上司もコンプライアンス重視で新入社員に仕事の指示をするように心がけなければならない。
  日本の企業では、内部告発をする人が保護されるという環境がまだ整っていないので、なかなか勇気を出して告発できないのが現状だ。企業の中では、当たり前と思ってやっている仕事であっても、実はそれは法律違反の仕事だったりするケースも多い。新入社員は、会社の基準ではなく自分自身で判断し、正しい行動ができるようになってもらいたい。
●  ジェネラリストを志向する者が6年ぶりに5割超
  給料の決め方については、各人の業績や能力が大きく影響する給与システムを好むとした人は、66.7%と多くの人が望んでいるが、2002年の同じ調査結果の73.3%と比較すると、かなり意識が変化してきているといえる。逆に、業績や能力よりも年齢や経験を重視して給与が上がるシステムを選んだ人は、33.3%と2年連続で増加している。成果主義が当たり前の時代になりつつあるが、それでも安定志向を求めている人が増加しているのはとても興味深いところである。
  自分のキャリアについては、スペシャリスト志向が2年連続して減少し、ジェネラリスト志向が6年ぶりに5割を超えた。過去には、スペシャリスト志向のほうが強い時代もあったわけだが、今年の新入社員はいろいろな経験を積んで、その中から自分にあった仕事を探したいと思っている人が多いのかもしれない。
  新入社員の意識調査は、その時代をはっきりと反映しているので、企業側もこのような調査結果を新入社員育成などに上手に活用してみるのが良いのではないだろうか。
参考:「社会経済性本部 第15回 2004年度 新入社員意識調査」
(社会保険労務士 庄司 英尚)
2004.05.06
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