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ワークライフバランスの重視
●  米国でのワークライフバランスの普及
  「ワークライフバランス」とは、企業人が仕事と個人生活を調和させ、両者ともバランスよく発展させようという考え方である。
  米国では、ワークライフバランスの実現を支援する人事制度や福利厚生制度の導入が進んでいる。
  その理由として、米国では1980年代のリストラによって、企業に対する従業員の依存心、期待が薄れ、企業に頼らず、個人としてキャリアアップや生活設計を考えるようになったことが挙げられる。その結果、個人の生活とキャリアアップが一体化し、その中で両者をバランスよく充実させることが重要となった。
  企業はこうした従業員の変化をくみ取り、優秀な人材を雇用し、定着させ、さらには高い付加価値の仕事ができるようワークライフバランスを意識した人事制度、福利厚生制度を整備するようになった。
  具体的な制度としては、「カジュアルウエアでの勤務」「従業員支援プログラム(アルコール依存症や薬物乱用から更生するための援助)」「401(k)プラン」「奨学金などを会社が返還する」「無給休暇」などがある。今後普及するとされる制度としては、「長期介護保険」「ジョブ・シェアリング」「在宅勤務」などがある。
●  日本でのワークライフバランスの定着に向けて
  日本では、ファミリーフレンドリー企業という考え方が、厚生労働省の肝いりで次第に定着しつつある。日本労働研究機構(現 独立行政法人 労働政策研究・研修機構)の調査(2001年)によると、ファミリーフレンドリーであることを重視している企業は49.6%、そのうちファミリーフレンドリー企業であることが人事施策上に効果があるとする企業は53.7%にのぼっている。
  日本においても、少子化による労働力の不足、従業員ニーズの多様化、エンプロイアビリティーへの注目などの理由から、長期的にはワークライフバランスの浸透は進むことが予想される。
  しかし、現段階では日本ではワークライフバランスの前段階ともいえるファミリーフレンドリーさえも十分浸透しているとは言えない。その範囲も育児・介護が中心となっており、個人生活全般を支援するものとは言いがたい。
  日本においてワークライフバランスが普及するための要件としては、多様化している個々の雇用形態を認め、正社員を最善とする考え方を改めることと同時に、従業員が今以上のキャリアビジョンを持ちつつ仕事をすることである。
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2004.05.24
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