>  今週のトピックス >  No.830
CSR(企業の社会的責任)の取り組み広がる
●  メーカー中心に専門部署や報告書
  最近「CSR」という耳慣れない用語をよく聞くようになった。「コーポレート・ソーシャル・レスポンスビリティー(Corporate Social Responsibility)」の略で、邦訳すると「企業の社会的責任」となる。「企業はただ単に営利を追求するだけでなく、環境への配慮、法令順守、社会貢献などにも取り組むべき」という考え方だ。CSRを経営に取り入れる企業は欧米を中心に広がっている。ここ数年大企業の不祥事が相次いでいる日本でも、大手がCSRの関連部署を設けるなど動きが出てきた。
  日本でCSRの取り組みが進んでいるのは電機メーカーだろう。世界規模で工場を持ち、各国でグローバル企業と競争しながら製品を販売しているため、欧米で盛んなCSRという考え方をいち早く取り入れた。例えばソニーは昨年3月に「環境・CSR戦略室」を社内に設置。2003年度版から環境報告書を「CSRレポート」とし、環境保全、コンプライアンス(法令順守)、雇用など幅広い視点から編集した。こうした動きはメーカーだけでなく、銀行や保険会社、小売業などにも広がりつつある。
●  そもそもCSRとは?
  一口にCSRといっても、取り組みの範囲は幅広い。従業員に対する育児・介護への配慮、公害物質を含まない製品作り、工場周辺に住む人との対話など、こうした取り組みはすべてCSRの一環と考えられる。まとまった定義は存在せず、機関や団体、企業でさまざまなとらえ方をしているのが現状だ。社会事情の違いからCSRのとらえ方は国によってもさまざまだ。欧州では、EU統合で失業問題が表面化したことから、労働環境の改善にCSRの力点が置かれた。日本では、公害や環境破壊に対する企業の取り組みを記載した環境報告書を土台に、CSRの議論が進んできた。
●  日本でも規格作りが始まる
  こうしたなか、ソニーなど大手八社と日本経団連は、経済産業省と協力してCSRの日本規格をまとめることにした。国際標準化機構(ISO)が2007年にもCSRを規格化する方針のため、早期に国内基準を作成し、少しでも日本の実情にあった規格にしてもらうのが狙いのようだ。ISOの明確な規格ができると、企業の健全性をみる物差しとして、投資先や取引先の選定基準にする動きが世界的に広がる。規格に沿わない企業は国際的な取引などから締め出される可能性が出てくるだろう。
2004.05.24
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