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年金制度改革法が成立
  公的年金の給付と負担を見直す年金制度改革法が、6月5日の参議院本会議で与党の賛成多数により可決、成立した。今回の年金制度改革法の成立について、経済界では「十分な審議を経ずに可決したことを残念に思う」という声が多かった。国民も、年金に対しては不信感を抱いたままであり、法案の成立に関しても冷めた目で見ている人が多かった。
  今回の改革の趣旨は、保険料水準の確保や基礎年金の国庫負担割合の引き上げなどであるが、少子化などが想定を超えて進めば、負担も給付も途中で見直さなければならなくなるだろう。
●  保険料固定へ:厚生年金は2017年9月以降18.30%に
  今回の改革の柱は、「保険料の固定方式の導入」である。少子高齢化が進み、給付と負担のバランスが崩れてきていることは事実である。この事実を受け止めれば、現役世代の負担増加は避けられない。そこで今回の改革では、2017年度以降は保険料を固定するが、それまでは毎年保険料が増加する方式を導入した。この上限についても、今後の貨幣価値が変わらないと仮定した場合の数字であり、疑問が残る部分でもある。
  具体的にみると国民年金は、保険料月額(現在1万3,300円)を2005年4月から1万3,580円とし、以後毎年度280円ずつ引き上げ、2017年度以後は1万6,900円に固定することになった。
  厚生年金保険料率(現在は年収の13.58%を労使折半)は2004年10月から2005年8月まで13.934%(労使折半)とし、以後毎年0.354%ずつ引き上げ、2017年9月以後は18.30%に固定することになった。
●  給付水準の引き下げへ
  高齢化の進展に伴い、保険料増加にあわせて給付水準も抑制することとなった。現在厚生年金のモデル世帯(夫が40年加入、妻が専業主婦)の給付水準は、現役世代の平均手取り賃金の59.3%である。今回の改革により徐々に給付水準が下がり、2023年度以降は、50.2%となる。しかし、実際に給付水準通りに受け取ることができるのは、モデル世帯のみである。例えば夫婦が共働きの場合、給付水準は39.3%にまで下がってしまう(厚生労働省試算)。
●  離婚時に年金分割可能に
  今回の改革で注目すべき点は、夫婦が離婚する際に厚生年金を分割できる仕組みができたことである。年金分割は、結婚してから離婚するまでの期間に夫と妻が支払った厚生年金保険料を夫婦の共同負担とみなし、離婚時に改めて分ける仕組みである。分割割合は話し合って決め、保険料支払いの少ない方は2人の合計負担額の最大2分の1を分割して受給できるようになる。夫婦が分割割合を合意している場合には分割請求することになり、また、夫婦間で合意が得られず家庭裁判所が割合を定める場合も対象となる。離婚するかどうか悩んでいる人にとっては朗報であるが、2007年4月以降に離婚した人が対象となるので注意が必要である。
  また、今回の改革で基礎年金の国庫負担割合が現在の3分の1から2分の1に引き上げられることになったが、その財源不足をどのような方法で補うのかも大きな問題であり、政府の今後の動きには注目しておく必要がありそうだ。
(社会保険労務士 庄司 英尚)
2004.06.14
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