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相続時精算課税制度 初年度は7万8,000人が選択
●  相続時精算課税制度の影響で贈与税の税収が増加
  国税庁は平成15年分の贈与税の申告状況を公表し、相続時精算課税制度の創設初年度の申告状況が明らかになった。従来の暦年課税を含む贈与税全体の申告状況は、図表を見ると申告人員が43万1,000人(前年比+4万1,000人)で、このうち納税人員は27万1,000人(前年比▲1万8,000人)、申告納税額は900億円(前年比+137億円)で、納税人員一人当たりの申告納税額は33万円(前年比+7万円)であった。このうち相続時精算課税制度を選択した人は7万8,000人で、このうち贈与税を納めた人は4,000人、申告納税額は206億円で、納税人員一人当たりの申告納税額は526万円であった。相続時精算課税制度の影響もあってか、前年に比べ納税人員は減少したものの、申告人員、申告納税額、一人当たりの申告納税額とも増加した。
●  親から子への財産の早期移転の視点で有効活用を
  相続時精算課税制度は、親子間の贈与について、生前贈与を円滑化し、財産の早期移転による有効活用を通じた経済社会の活性化のために創設された。贈与時には2,500万円もしくは3,500万円(住宅取得等資金の場合)まで贈与税がかからず、一見魅力的に見えるが、相続時には贈与財産は再び持ち戻されて相続税額を計算するため節税効果はない。また、一度選択すると再び従来の暦年課税には戻れず、選択をして良いのか税理士などの専門家でも判断が難しく実際のところ評判がよくなかった。それだけに一体どのくらいの人が選択するのか注目されていたわけであるが、贈与税申告者全体43万1,000人の約18%にあたる7万8,000人が選択した。この数字を果たして多いとみるか少ないとみるか、見解も分かれるであろう。このうち約5%にあたる4,000人が2,500万円もしくは3,500万円の特別控除額を超える贈与を行い贈与税の納付を行った。なお、3,500万円の特別控除額が使える住宅取得等資金の贈与を行った人はこのうちの3分の1程度とのことである。納税人員一人当たりの申告納税額526万円は、従来の暦年課税も含めた贈与税全体の納税人員一人当たりの申告納税額33万円の約16倍に達しており、相続時精算課税制度を活用して大型贈与が行われたことが分かる。今後、贈与財産の内容などがまとめられてくると、この制度を使ってどのようなものを生前贈与しているのか明らかになる。そうすれば有効な活用方法が見えてくる。相続時精算課税制度は、節税を行うための手段ではない。税金とは切り離して、親から子へ財産を早期移転し有効活用させるための手段という視点で考えたい。
【図表 贈与税の申告状況】
 
平成14年分
平成15年分
平成15年分/平成14年分
申告
人員
(千人)
納税
人員
(千人)
申告納税額
申告
人員
(千人)
納税
人員
(千人)
申告納税額
申告
人員
(%)
納税
人員
(%)
申告納税額
全体
(億円)
1人
当たり
(万円)
全体
(億円)
1人
当たり
(万円)
全体
(%)
1人
当たり
(%)
総 数
390
289
763
26
431
271
900
33
110.3
94.0
118.0
125.5
うち精算課税
制度適用分
78
4
206
526
(注)両年分とも翌年3月末日現在の数値である。
出典「国税庁 平成15年分の所得税と贈与税、個人事業者の消費税の確定申告状況について」
2004.06.14
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