>  今週のトピックス >  No.842
減損会計を早期適用する企業相次ぐ
●  2006年3月期から全上場企業に強制適用
  減損会計を2004年3月期決算に前倒しで適用する企業が相次いでいる。減損会計とは土地や工場、機械などの固定資産の価値が帳簿上の価格を著しく下回った場合、その差額を損失計上する会計基準のこと。日本ではバブル崩壊で固定資産に含み損が生じたのに、損失処理がなかなか進まないため導入が決まった。減損会計が適用されれば、企業財務の透明性が高まり、投資家保護につながる。
  減損会計が全上場企業に強制適用されるのは2006年3月期から。それを待たずに企業が早期適用に踏み切るのは、含み損を早く処理し、財務の透明性を投資家や金融機関にアピールする狙いがある。早期適用できるということは損失計上に耐える経営体力があることを意味するため、業界の中でも「勝ち組」であることが多い。
●  世界標準に合わせて日本も導入
  これまで日本では土地などの固定資産は減損会計の対象外だったが、金融庁の企業会計審議会が世界のすう勢に合わせて固定資産も対象とすることを決めた。会計基準の国際化を目指す「会計ビッグバン」の一環だ。米国は1995年に減損会計制度を導入。欧州も2005年から本格的に導入する。日本の企業でも事業を国際展開している自動車や家電メーカーの中には、米国会計基準をすでに導入済みのところもある。日本企業に投資する外国人投資家は年々増えており、日本だけが減損会計導入を先送りするわけにはいかなかった。
●  目的は投資家保護
  減損会計導入の最大の目的は投資家の保護にある。バブル崩壊後、企業が保有する土地には現在も多額の含み損が生じ、企業の決算書にある固定資産の簿価は実態を十分に反映していない場合がある。本業が好調に見えても、多額の含み損を抱える高リスク企業に誤って投資しないよう、会計基準を見直す必要があった。減損会計の強制適用で企業はバブルの負の遺産の処理を先送りできなくなる。含み損を抱える土地などの売却を進めてきた企業はいいが、処理が手付かずで財務体質が弱い企業は減損損失に耐えられず、破たんの危機に瀕する可能性もある。
2004.06.14
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