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金融所得課税一体化の検討状況
●  金融商品の課税のバランス
  金融所得課税については、「金融商品間の課税の中立性」「簡素で分かりやすい税制」「投資リスクの軽減」が欠かせないという認識のもとで、金融所得課税の一体化、つまり、金融所得間の課税方法のバランスの確保と、金融所得間の損益通算範囲の拡大が検討されている。
  政府税制調査会による2003年6月の中期答申を受けて、金融小委員会で詳細が議論されてきたが、本年6月に同小委員会での整理が終わり、今後、調査会総会での報告がなされた後、実務的な検討が進められる予定である。
  金融商品ごとの課税方法を見直し、金融商品間のバランスをとることになる。
  配当所得については、20%の分離課税が考えられるが、配当控除や負債利子控除についても再検討が必要となるとしている。
  公社債譲渡益等については、現在は非課税であり、譲渡損失もないものとみなされている。今後は、株式譲渡損益には課税し、償還差損益についても検討すべきとしている。公社債投信の譲渡益も同様の扱いが予定されている。
  外貨預金(為替予約のないもの)の為替差益については、現在、雑所得である。今後は20%の分離課税としている。
  保険については、まず死亡保険金は他の金融商品との一体化は不要としている。一方、満期保険金や解約返戻金の収益は、それらが保険料の運用成果と見うる場合には、20%の分離課税を検討すべきとしている。
●  損益通算の拡大
  金融所得間の損益通算の範囲を拡大して損失の控除の範囲をより拡大することで、投資リスクの軽減が期待されている。
  まず株式譲渡損益と公社債譲渡損益の損益通算については、公社債譲渡益課税化を前提に認めるべきとしている。株式譲渡損失と配当所得の損益通算についても、認めることが適当としている。利子所得を他の所得を通算するためには、現行の源泉分離課税を改め、申告を可能とすべきとしている。
  損益通算を拡大する前提としては、番号制度が必要としている。ただし、番号制度に対しては国民の理解が得られていないため、番号利用を選択制とし、損益通算の適用を受けようとする場合は、番号を利用するという案が提示されている。
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2004.06.21
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