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中国株投資について
●  個人投資家が注目する中国株の現状
  世界的な景気回復期待感のもと、個人投資家の間で株式投資の人気が復活し始めている。中でも、現在、最も熱い視線を送っている投資先の一つが、中華人民共和国(以下、中国)の株式市場だろう。中国は、世界一の人口(外務省データでは2000年11月現在で12億6,583万人)を有する国で、近年急速に資本主義を取り入れているアジアの大国である。外務省公表の2002年の経済関連データは、下表のとおりである。
GDP
経済成長率
貿易額(輸入)
貿易額(輸出)
為替政策
約1兆2,300億ドル
8%
2,952億ドル
3,256億ドル
1ドル=約8.3元前後の原則固定相場
出典:「外務省ホームページ」
  中国株投資が人気を集めている最大の理由は、経済成長率の高さ(2002年8%、2003年9.1%)であろう。ちなみに同時期の日本(2002年マイナス0.4%、2003年2.7%)と比べても、その高さが分かる。
  今回は、中国株投資に関して、知っておくべき基本的な事項として以下の1〜6を取り上げる。
1.中国株の取引市場
  中国株式の取引市場は、上海市場、深セン市場、香港市場の三つがあり、株式時価総額の規模が大きい順に、香港、上海、深センとなっている。最大規模の香港市場は、株式銘柄が1,000以上にのぼり、その株式は「H株」「レッドチップ」「ハンセン」などと呼ばれている。
2.株式の種類
  中国株式市場の特徴は、外国人取引が制限されている銘柄があることである。下の一覧表が3市場ごとの代表的な株式の種類と外国人の取引の可否を一覧にまとめたものである。
市場名
代表的な株式の種類
取引通貨
外国人投資家の購入
値幅制限の有無
香港
H株
香港ドル
なし
レッドチップ
香港ドル
なし
上海
A株
人民元
不可
±10%
B株
米ドル
深セン
A株
人民元
不可
±10%
B株
香港ドル
  上海・深セン市場のいわゆる「本土市場」に、A株と呼ばれる中国人専用の株式市場が形成されていることは、欧米株式市場にない特徴といえる。また、上海・深センの両市場とも、銘柄数は中国人専用のA株のほうが圧倒的に多い。つまり、近年、資本主義化が進みつつあるとはいえ、現在の中国株投資は、投資家が自由に銘柄選定や売買を行える市場ではないということだ。中国株に投資する場合、銘柄が香港市場やB株などに限定されており、株価が決定されているという現状を留意しておく必要がある。
3.取引(購入・保有・売却)コスト
  現在の中国株投資は、国内の証券会社が、現地の証券会社へ再度依頼をして取引を行うというものが一般的である。そのため、通常の国内株式の取引以上に手数料が必要となるケースが多い。実際に、国内証券会社の窓口で中国株式を取引する場合の主な手数料としては、次の四つがある。
  1. 国内証券会社への手数料
  2. 現地(証券取引所や証券会社)への手数料・税金など
  3. 口座管理手数料
  4. 為替手数料(円⇔米ドル、もしくは円⇔香港ドル)
  しかし、最近は証券会社間の競争激化に伴い、上記の手数料が、会社ごとに大きく異なり始めており、1.〜4.の合計手数料がいくらになるか、複数の証券会社をチェックすることが非常に重要といえる。
  例えば、1.の手数料に関して、定額制(高額取引には有利)の場合もあれば、定率制(小額取引に有利)の場合もあり、取引の金額によって投資家に有利にも不利にもなる。2.〜4.に関しても同様に証券会社で大きく異なるため、実際に取引を行う際には、複数の会社で手数料を確認するように心掛けたい。
4.売却益に対する課税
  中国株式の売却に伴う収益に対しての課税は、その為替差益も含め国内株式と同様に譲渡益課税(現在は所得税・住民税合わせて10%)が行われる。この点は、平成15年度の証券税制改正によって、大幅に減税されているので、投資家にとっては喜ばしいことといえるだろう。
5.中国株に関する情報収集の方法
アイザワ証券
http://www.aizawabtc.com/
東洋証券
http://toyo.searchina.ne.jp/
DLJdirectSFG証券
http://www.dljdirect-sfg.co.jp/
内藤証券
http://www.naito-sec.co.jp/
  中国株投資でネックとなるのは、国内株や米国株などに比べ、投資先の情報量が少ないという点である。しかし最近は、中国株を取り扱っている証券会社数の増加に伴って、かなり容易にしかもタイムリーな情報が入手できるようになっている。以下の中国株取扱証券会社のホームページには、かなり充実した内容が掲示されているので、参照してみるとよいだろう。
6.中国株投資を行う手軽な手法
  「中国株への投資は興味があるが、個別銘柄の情報を入手するのは面倒だ」という投資家の場合でも、「投資対象を中国株とする投資信託」が続々と発売されているため、手軽に中国株投資が可能な時代となりつつある。なぜなら、投資信託の場合、運用のプロが投資先の銘柄選定などを行うため、個人が投資銘柄の選定や情報を収集する手間が大幅に軽減されるからである。そのため、個人でも手軽に、小額(一般的には1万円以上)から中国株投資に参加できる。また最近は、上海・深センのA株へ投資する投資信託も発売され、注目を集めている。株式投資の経験はないが、「中国株投資は非常に興味がある」という初心者は、投資信託を通じた中国株投資も一案といえる。
●  当面の見通し
  当面は、北京オリンピックの開催や、変動相場制への移行による元の価値上昇といった、為替政策の変更の可能性などを含み、中国株投資が有望な投資先として、個人投資家の人気を集めることは容易に想像できる。その際に、顧客に対しては最低限、上記程度のアドバイスはできるようにしておきたいものである。
当資料については情報提供を目的としており、個別の投資商品等の購入を推奨するものではありません。投資を行う際における判断等については、自身の自己責任のもとによって行われるよう、お願いします。
2004.06.21
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