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年金改正に早くも黄信号!? 低下が続く出生率
●  1.29と史上最低を更新した出生率
  6月10日、厚生労働省は、2003年の「人口動態統計」を発表した。これによると、女性が一生に産む平均的な子どもの数を表す合計特殊出生率(以下、出生率)は、前年の1.32から1.29へ低下し、史上最低を更新した。都道府県別にみると、東京が1.00となるなど、大都市部での低さが目立っている。出生率は、昭和40年代はほぼ2.1台で推移していたが、昭和50年に2.0を下回ってから低下傾向となっている。
●  2003年の予想を早くも下回る
  一方、2003年1月には、5年ごとに行われる「将来推計人口」が発表されている。その標準シナリオ(中位推計)では、2003年の出生率は1.32と予想されており、今回早くも実績が予想を下回った。同推計では、出生率は2005〜9年の1.31で底を打ち、2050年にかけて1.39まで緩やかに回復するとしていた。先に決定した公的年金制度の改正は、この推計を前提にしたものだけに、早くもその行方に黄信号がともった形となっている。
国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成14年1月推計)』
【図表 合計特殊出生率の推移】
【図表 合計特殊出生率の推移】
出典:
実績は、厚生労働省「人口動態統計」
推計は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成14年1月推計)」
●  晩婚化に歯止めがかかれば上昇?
  この結果に関して厚生労働省では、「出生率は、実際には2種類があり、通常使われる『期間』合計特殊出生率は、晩婚化の影響で実態より低めに出ており、晩婚化が止まれば、上昇が見込まれる」と説明している。
  出生率の動向は公的年金の財政状況を大きく左右するだけに、その行方が注目される。
「期間」合計特殊出生率
ある期間の出生状況に着目したもので、その時点における各年代(15〜49歳)の出生率を合計したもの
「コーホート」合計特殊出生率
ある世代の出生状況に着目したもので、同一年代生まれの女性の出生率を過去から積み上げたもの。実際に「一人の女性が一生の間に産む子どもの数」を示す
  • 現在、晩婚化が進行中であり、出産を終えた高年齢世代の低い出生率と、晩婚化により出産を先送りしている若年齢世代の低い出生率の合計として「期間」合計特殊出生率は、「コーホート」合計特殊出生率より低く表れている。
  • 年齢別の近年の出生率は、35歳以上で上昇しており、出産の先送りが行われていることから、晩婚化に歯止めがかかれば、「期間」合計特殊出生率の上昇が見込まれる。
参考:厚生労働省ホームページ
2004.07.05
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