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海外でハッピーリタイア
  夏休みを迎え、この夏の過ごしかたの計画を立てている人も多いだろう。旅行業界最大手のJTBが発表した「2004年夏休みの旅行動向」によると、1泊以上の海外旅行に出掛ける人は、前年同期比30.3%増の245万人となり、3年ぶりに増加する見通しとなっている。
  これは、国際情勢に一部不安感が残るものの、新型肺炎(SARS)や鳥インフルエンザへの不安が解消されたこと、また、アテネオリンピックの開催が大きな追い風になっていると考えられる。
  方面別では、ハワイやアジアのビーチリゾートがファミリー層に人気が高く、中国は女性やグループ客の人気が集まっている。文化交流が盛んな韓国は女性客を中心に大幅に回復しており、アテネオリンピック開催に関連し、ヨーロッパ方面も注目度が高い。
  なお、一人当たりの平均旅行費用は、費用の安いアジアへの旅行が回復しているため、前年同期比5.6%減の21万334円となっている。
●  「海外移住」が老後生活の選択肢に
  一方、世の中をエネルギッシュに変えてきた団塊の世代がそろそろ60歳を迎え、老後生活を海外でエンジョイする人が、増加すると予想される。外務省の調査によると、平成15年の海外在留邦人数は90万人を突破し、前年比4.5%増となっている。日本国内の住み心地の悪さに対する逆転の発想として考えると、インターネットが発達した現在においては、家族とのコミュニケーションもいつでも簡単にできるので、海外移住はますます検討に値する選択肢となるだろう。
  海外の移住先を考える場合、収入が年金だけに限られるため、日本との物価水準の差が問題となってくる。幸いなことに日本の物価水準の高さは世界一に近いので、ほとんどの国でその恩恵をうけることが可能である(図表参照)。日本の平均的なサラリーマンの年金年額約240万円を基準に考えると、タイではなんと960万円程度の価値を持つことになり、オーストラリアでは480万円程度の生活が可能となるだろう。
  老後生活を経済面で支える年金について、社会保険事務所に照会したところ、海外の銀行にも直接年金を送金してくれ、また、年1回行わなければならない現況届は、海外に居住していても可能とのことである。
【図表 食料品の小売価格の比較】
(単位:米ドル)
食料品名
日本
タイ
オーストラリア
小売価格
1
小売価格
2
日本の値段
1/2
小売価格
3
日本の値段
1/3
米(1kg)
3.21
0.49
6.55倍
0.96
3.34倍
牛肉(1kg)
34.13
2.68
12.74倍
5.99
5.70倍
鶏卵(1ダース)
2.07
0.62
3.34倍
1.85
1.38倍
たまねぎ(1kg)
1.48
0.83
1.78倍
0.83
1.78倍
キャベツ(1kg)
1.24
0.32
3.88倍
0.77
1.61倍
ビール(0.33リットル)
1.53
0.56
2.73倍
1.10
1.39倍
出典:「総務省統計局 主要食料品の小売価格(2002年)」
●  海外移住の注意点
  注意しておきたい点として、年金は送金日の為替レートが適用されるため、為替の変動リスクを負うことが考えられる。この為替リスクを回避するためには、年金振込口座を日本国内の銀行口座に指定しておき、為替が円高になったとき居住地の銀行に送金するとよいだろう。この点に注意すれば、十分ゆとりある生活が可能といえる。
  事前に居住地の文化や言語に親しんでおく必要や、ビザ(査証)の問題もあるが、将来の海外生活を考えれば、楽しんで取り組めるのではないだろうか。
  また、完全に海外移住するのではなく、日本との二重生活を希望する場合、居住地と日本との旅費や、公共料金、税金など、プラスアルファの資金が必要となるため、その点も考慮した資金の準備が必要だろう。
  高齢者が海外に永住する場合、経済面での準備や、治安面、高齢者特有の医療面でのケア体制を確認し、備えを万全にしておくことが必要最低条件だといえる。
2004.07.20
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