>  今週のトピックス >  No.864
新規事業へ進出し、現在も継続しているのは、約14%
  厚生労働省が7月15日に発表した「平成15年 産業労働事情調査(事業活動と雇用創出に関する調査)」の結果によると、「過去3年間に新規事業の開始・拡大等を行い、現在もその事業を行っている事業所」の割合は13.5%にとどまっている。この結果から新規事業を立ち上げ、継続させることがいかに難しいかを読み取ることができる。また同様に、今後3年以内の新規事業の開始・拡大等については、「希望している」と答えた事業所の割合はわずか9.6%という結果となった。
●  「医療・福祉」の新規事業が目立つ
  「過去3年間に新規事業の開始・拡大等を行い、現在もその事業を行っている事業所」の割合は13.5%に過ぎない。この伸び悩みの原因として想定されることを考えていくと、ここ数年の景気の低迷はいうまでもないが、新規事業に進出しても採算的に事業計画どおりにいかない、あるいはうまくいきそうにないので傷口の浅いうちに早めに撤退しているからではないだろうか。
  現在でも新規事業を行っている企業に、新規事業の開始・拡大の内容を聞いてみると、「既存の事業以外の事業への進出」が5.9%、「生産・販売の方法等を見直すことによる既存の事業の拡大」が4.1%、「新たな事業所として開設」も同じく4.1%という結果となった(複数回答)。
  またこれらを産業別に見ていくと「医療・福祉」が最も高く25.4%、次いで「電気・ガス・熱供給・水道業」20.5%の順になっている。高齢化社会には必要不可欠な「医療・福祉」の分野は今後もますます新規事業として注目されるに違いない。
●  今後3年以内の新規事業の開始・拡大の希望があるのは約1割
  今後3年以内の新規事業の開始・拡大等については、「希望している」と答えた事業所の割合はわずか9.6%で、「ない」が46.3%、「わからない」が44.0%という結果になった。未来のことであるので「わからない」と答えている企業が多いのは、仕方がないことだが、「ない」と答えている企業がほぼ同じ割合を占めていることは、気になる結果である。このような結果となった背景には、各企業が慎重に事業を進めていこうとしていることと、新規事業に進出する費用の捻出の難しさなどが考えられる。
  しかし、この経済が低迷している状況の中でもビジネスチャンスはたくさんあるし、実際地域によってばらつきもある。同じ質問に対して全国平均では、「希望している」の割合は9.6%であったが、第1位の長野県は、17.4%となっており、次いで宮崎県の14.4%、群馬県の14.2%となっている。群馬県は、「過去3年間に新規事業の開始・拡大を行い、現在もその事業を行っている」割合でも26.4%で全国平均の13.5%を大幅に上回り、他を大きく引き離して第1位である。新規事業の開始・拡大の割合は、都道府県別にみていくと偏りがみられることから、各地域の産業、文化および人間性なども大きく影響しているのではないだろうか。
  いずれにしても既存の事業の概念にとらわれることなく、新規事業が次々と生まれ、その新規事業が育っていく環境づくりを、国も一緒になって支援していく必要がありそうだ。
出典:「厚生労働省 平成15年 産業労働事情調査」
(社会保険労務士 庄司 英尚)
2004.07.26
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