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「支払査定時照会制度」の実施でさらなるモラルリスク排除へ
●  生保各社ではモラルリスク対策を強化
  生命保険各社では、不正契約(いわゆるモラルリスク)排除に向けた対策を強化している。昨年1月には、保険契約者が保険金等を不法に取得することを目的に保険契約を締結した場合に、契約を無効とする項目「保険金不法取得目的の保険契約の無効」を約款に規定した。制度面では来年1月から「支払査定時照会制度」が創設され、保険金や入院給付金の支払査定時に、他社における契約や支払情報を生命保険会社相互で照会することが可能となる。
●  契約時にモラルリスクを排除するための「ご契約内容登録制度」
  モラルリスク対策の動きは、昭和55年10月に実施された「ご契約内容登録制度」にさかのぼる。この制度は、入院給付金や死亡保険金の不正取得を目的とした多重契約の排除を目的としたもので、一定の登録基準に該当した場合には「保険契約者・被保険者の氏名」、「死亡保険金額」、「入院給付金日額」などの情報が生保協会に登録される。登録基準は公表されていないが、制度発足後も随時登録基準の引き下げが行われ、現在に至っている。
  また、平成元年10月からは、生保共同センター(LINC)を利用することにより、契約情報のネットワーク化が進展した。これにより照会に要する期間が短縮され、短期間に集中的に加入するケースにも対応できるようになった。さらに、入院給付金請求時の支払査定にも利用できるようになった。
  なお、平成14年4月からはJA共済連との間で「ご契約内容登録制度」に登録されている契約情報と、JA共済連の契約情報を相互に交換する「契約内容照会制度」が実施されている。
●  支払査定時にも照会制度を創設
  今回実施が決定した「支払査定時照会制度」は、保険金や入院給付金の支払査定時に、他社の取り扱い情報を照会する制度である。現在も支払査定時に「ご契約内容登録制度」を利用することが可能だが、登録されている情報が契約時の情報に限られ、他社での入院給付金等の支払いや請求歴を照会する公的な制度はない。特に、入院給付金の支払査定時には被保険者の収入や所得に対して入院給付金の支払額が過大ではないかといった、いわゆるモラルリスク査定が重要となるため、公的な制度として他社の支払い歴等を照会することができるようになった意義は大きい。
●  「支払査定時照会制度」の照会・回答項目
  「支払査定時照会制度」により、生命保険会社が照会できる項目および回答を行う項目は次のとおりである。
  1. 照会項目
    • 被保険者の氏名、性別、生年月日、住所(市・区・郡まで)
    • 契約日、保険事故発生日、死亡日、入院日、対象となる保険事故
  2. 回答項目
    • 契約者・死亡保険金受取人等の氏名、被保険者との続柄、死亡(災害死亡)保険金額、特約内容、請求・支払状況 等
  なお、照会する情報は契約者の個人情報であり、取り扱いには厳重なルールを設けることが望まれる。
2004.07.26
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