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「構造改革」の成果を強調した2004年度経済財政白書
  竹中金融・経済財政担当相は、7月16日の閣議に、2004年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。小泉政権発足以来の「改革なくして成長なしW」と題された今年度の白書は3章から構成され、第1章では総論として、経済全般について分析しつつ、第2、3章では各論として、「地域経済」と「グローバル化」を取り上げている。
●  各章のポイント
<第1章:改革とともに回復を続ける日本経済>
  第1章では、まず、今回の景気回復の特徴を「政府支出抑制下での民需増加が回復を主導」、「過剰債務・雇用が削減され、企業部門の体質が強化」、「日本企業が得意分野とするデジタル家電などで創意を発揮」とした。その上で、企業部門について、不良債権処理の進展や人件費・債務削減、事業再編等のリストラなどの成果が今回の業績回復につながったとしている。
  一方、家計部門については、依然厳しい状況にあるとしつつ、雇用情勢や個人消費の持ち直しの動きに言及している。デフレについては、克服は「道半ば」として、比較的慎重な見方を示した。こうした現状分析に続いて、財政金融における構造改革の成果を強調するとともに、今後の景気の行方については、海外経済や為替の動向などの外的リスク要因を指摘しつつ、それらが顕在化しなければ、日本経済は今後も民間需要を中心に回復を続けていく基盤が整いつつある、とした。
<第2章:地域経済再生への展望>
  続く第2章では、景気回復の地域差について、長期的要因は、産業構造など地域固有の構造要因であるとした。その解決のためには、地域のイニシアチブに基づき、それぞれ異なる処方せんで対応していくべきとし、行財政改革や構造改革特区を例に、地域における構造改革のあり方を論じている。
<第3章:グローバル化の新たな課題と構造改革>
  第3章では、まず、1990年代以降のグローバル化の特徴として、「為替レートの大幅な変化と経済への大きな影響」、「貿易・直接投資面で、東アジアの重要性の高まり」、「国際金融・資本取引の低調」、「欧米諸国と比べて緩やかなグローバル化」の4つを挙げた上で、グローバル化による日本経済への影響を論じている。また、FTAなど国際的な経済連携の必要性を強調するとともに、グローバル化のメリットを享受する上での構造改革の必要性に言及し、農業、対内直接投資、外国人労働力などをテーマとして取り上げた。
●  今回の白書に対する見方
  経済財政白書の内容については、毎年、民間エコノミストなどから「踏み込み不足」と辛口に批評されるのが恒例となっている。とりわけ今回は、景気の回復傾向を背景に、小泉政権の「構造改革」の成果を手放しで絶賛しているとの批判や、構造改革の影の部分に対する配慮が必要との意見が目立っている。
2004.08.02
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