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健康保険組合が5年ぶりの黒字に
  健康保険組合連合会は7月26日、主に大手企業が加入する健康保険組合全体の平成15年度の決算見込みが1,386億円の黒字になると発表した。過去最悪の3,999億円の赤字だった平成14年度から一転して赤字決算から収支改善された形だが、今後の医療費の増加傾向もあり、健保組合の財政は依然厳しい状況が続くものと想定される。
●  5年ぶりの黒字決算
  この黒字決算の要因として、「ボーナスを含めた年収を基準に保険料を徴収する総報酬制の導入による保険料の増加」「サラリーマン本人に対する医療費自己負担割合の2割から3割への引き上げ」などが挙げられる。これに伴って全組合数に対する赤字組合数の割合も平成14年度の80.6%から43.2%へと低下したが、依然4割を超える組合が赤字であることや、急激な高齢化の進展によって高齢者の医療費が大幅に増加するとみられることから、平成16年度は再び276億円の経常赤字になると見込まれている。
●  組合数・被保険者数は減少続く
  平成15年度末の組合数は1,622組合で、前年度末に比べ52組合減少し、これで平成7年度(1,819組)以降毎年減少を続けている。被保険者数は1,471万4,653人と前年度から約26万人減少している。これは主に解散等による組合の減少とリストラ等によるものとみられ、平成6年度以降10年連続の減少となっている。また、2月末の保険料率(単純平均)は75.63%で、総報酬制実施に伴い10.01ポイントの低下となっており、政管健保の保険料率(82%)を超える組合は、全体の27.7%であった。
●  今後の黒字の維持には、抜本的な対策が必要
  経常収入6兆40億円のうち、保険料収入総額は5兆8,604億円で、前年度に比べ3,261億円と大幅に増加し、一人当たりの保険料額も39万8,271円となり、前年度に比べ2万8,649円の引き上げとなった。一方、経常支出5兆8,654億円のうち、法定給付費総額は2兆9,127億円で前年度比4.6%減少しているが、これは被保険者本人負担の引き上げ等による影響と考えられる。その他の支出としては、老人保健拠出金が1兆6,846億円で平成14年10月の法改正による公費負担増や対象年齢の引き上げにより、前年度比8.3%減少しているが、退職者給付拠出金はリストラ等による対象者の増加により6,727億円となり、前年度比14.3%の大幅な増加となった。
  平成15年度は黒字決算となる見込みだが、これは法改正等の一時的な影響によるところが大きく、組合数・被保険者数の減少に依然歯止めがかからない現状からすると、継続的に安定した収支が保たれるための抜本的な対策を講じなければ、次年度以降黒字を維持することはかなり難しくなるだろう。
出典:健康保険組合連合会ホームページ
(社会保険労務士 庄司 英尚)
2004.08.09
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