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販売好調となった個人向け国債
  昨年3月の発売当初は、販売不振と伝えられていた個人向け国債が、最近、販売好調に転じている。その理由は、個人向け国債の金利のもと(個人向け国債金利=長期金利−0.8%)となる長期金利が上昇した結果、個人向け国債の金利が民間銀行の預金金利を大きく上回ったからである。そこで、今回は、最近販売好調となった個人向け国債について考える。
  まず、個人向け国債の代表的な特徴をまとめると次の通りである。
  1. 金利は変動金利(半年ごとに長期金利に連動して金利が変動)。ただし、0.05%の最低利率は保証されている
  2. 個人だけが購入できる国債である
  3. 1万円から購入可能である
  4. 1年経過後は、実質元本保証である
  中でも、発売当時から話題を集めた特徴は、「国債でありながら変動金利である」という点だ。個人向け国債が最初に発行された15年3月時点において、長期金利は0.7%前後を推移しており、その後の長期金利の下落余地はかなり限定的であった。ちなみに欧米諸国も歴史的な低金利水準といわれているが、それでもそれらの国は4%台であり、日本の長期金利がいかに低金利であるかが分かるだろう。そのような状況において、金利が上昇した場合に含み損の発生する可能性がある債券運用は、敬遠される傾向がある。しかし、個人向け国債は、先にも述べたように変動金利であり、長期金利の上昇は、受取利息の増加というプラスの効果を生み出すことになる。
  では、実際に第1回目から第7回目までの発行期間(2003年3月10日〜2004年7月12日)の長期金利の推移を、長期金利に大きな影響を与える日本株式の動向とあわせてグラフで見てみよう。
【図表1 長期金利と日本株式市場】
【図表1 長期金利と日本株式市場】
  2003年の6月以降、日本株式の上昇に影響され、長期金利も緩やかに上昇へと転じていることが分かるだろう。その結果、個人向け国債の金利も次第に上昇し、第1回目の発行時の金利は、0.09%だったが、2004年7月に発行された第7回目の金利は、0.74%と、第1回目の8倍以上に上昇している。また、第1回目発行の個人向け国債における金利は、すでに2回の金利見直しが行われており、その推移は次の通りである。
 
期 間
適用金利
個人向け国債
(第1回目発行)
平成15年3月11日〜平成15年9月10日
0.09%
平成15年9月11日〜平成16年3月10日
0.23%
平成16年3月11日〜平成16年9月10日
0.51%
平成16年9月11日〜平成16年3月10日
1%
(予定)
  つまり、昨今の長期金利上昇が、個人向け国債の受取利息を増加させており、その影響で、個人の資産運用の注目商品になりつつある。この人気ぶりは、初回適用金利が急騰した第4回目以降に発行額が急増していることを見れば明らかだろう。
【図表2 個人向け国債と初回適用金利】
【図表2 個人向け国債と初回適用金利】
  また、今後も長期金利が2%前後付近を推移するのであれば、1回の発行額が2兆円突破するのも時間の問題だといえる。加えて、来年4月に解禁されるペイオフ解禁によって、普通預金に眠っていた資金の一部が、今後、個人向け国債に流入することも予想される。
  預貯金に偏重した個人金融資産1,400兆円の行方に大きな影響を与える可能性がある個人向け国債の金利動向、ひいては長期金利の動向から、当分目が離せないようである。
出典:財務省ホームページ
2004.08.16
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