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不動産派生商品への投資が活発に ― 不動産証券化協会のアンケート調査
●  不動産投資信託に投資する機関投資家88%に
  不動産証券化協会が機関投資家を対象にした「不動産運用に関するアンケート調査」によると、日本の不動産投資信託(J-REIT)に投資する一般機関投資家の比率は昨年の55%から88%に伸びた。不動産私募ファンドも45%と昨年の3倍に伸びた。不動産派生商品への投資が活発になっているが、資産配分の額はいまだ低水準にとどまる。今後も不動産派生商品への投資が広がる余地は大きい。
  不動産投信は、投資家から集めた資金をもとに、オフィスビルや商業施設などを購入する。投資物件から得られる賃貸収入を配当金にあてる。利益の9割以上を配当する義務があり、長期国債などに比べ高い配当利回りを期待できる。
  一般機関投資家の不動産に対する投資状況は、「J-REITの投資口」に投資する比率が大きく前年調査比33ポイント増の88%、次いで「債権型の不動産証券化商品」が9ポイント増の60%、「不動産私募ファンド」が30ポイント増の45%と続いた。一方で「実物不動産等」に対する投資は前年調査比6%増の32%にとどまり、投資家の関心が実物不動産から不動産派生商品に移っていることがうかがえる。
●  高利回り期待で厚生年金基金も後追い
  厚生年金基金は「不動産私募ファンド」への投資が前年調査比11ポイント増の14%となったが、「J-REITの投資口」への投資には6%と前年と変わっていない。ただ投資検討中が31%と7ポイント増えた。地銀や一部の年金基金は不動産証券化商品を、高い利回りを追求する代替投資対象として重視し始めたが、機関投資家が不動産投資に先行、遅れて厚生年金基金が投資する傾向が出ている。
  全投資額に占める不動産関連の比率は機関投資家で2.5%、厚生年金基金で0.5%にとどまっている。不動産証券化協会は、「機関投資家の資産配分で不動産が占める比率は米国などに比べてまだ低水準」とみている。特に2001年9月に資産規模約3,200億円でスタートしたJ-REITは現在約1兆6,000億円にまで成長。さらに3、4年後には3兆円になるとみられる。
  今回の調査は今年5月に地方銀行や生損保、信託銀行などの一般機関投資家210社と、2003年3月末時点で総資産額が150億円以上の厚生年金基金338基金を対象に実施。86件(回収率は15.7%)の回答を得た。
【図表1 投資の有無について】
[厚生年金基金](回収数は42であるが、有効回答数はそれぞれ異なる。以下同じ)
 
投資を行っている
検討中
投資を行う予定はない
H15
H16
H15
H16
H15
H16
実物不動産等
9%
0%
6%
0%
85%
100%
J−REITの投資口
6%
6%
24%
31%
70%
63%
不動産プライベートファンドへの出資
3%
14%
9%
9%
88%
77%
証券化不動産の優先出資証券
9%
6%
13%
14%
78%
80%
不動産小口化商品への出資
3%
3%
3%
11%
94%
86%
債券型の不動産証券化商品
3%
3%
23%
12%
74%
85%
[その他機関投資家](回答数は44であるが、有効回答数はそれぞれ異なる。以下同じ)
 
投資を行っている
検討中
投資を行う予定はない
H15
H16
H15
H16
H15
H16
実物不動産等
26%
32%
0%
0%
74%
68%
J−REITの投資口
55%
88%
30%
5%
15%
7%
不動産プライベートファンドへの出資
15%
45%
19%
19%
66%
36%
証券化不動産の優先出資証券
11%
29%
34%
20%
55%
51%
不動産小口化商品への出資
6%
2%
13%
7%
81%
91%
債券型の不動産証券化商品
51%
60%
28%
13%
21%
27%
出典:不動産証券化協会「平成16年度 機関投資家を対象とした『不動産運用に関するアンケート調査』」
2004.08.23
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