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生前贈与の新制度、平成15年度の資産移転は1兆1,621億円
●  資産移転1兆1,621億円、利用者は約7万8,000人
  財務省から「相続時精算課税制度」の利用実績が公表された。その報告によると、「相続時精算課税制度」を利用した、平成15年度の親から子への資産移転額が約1兆1,621億円に達した。財務省は「新制度が住宅取得など、消費意欲が旺盛な若い世代への資産移転を後押ししている」と分析コメントを発表した。
  「相続時精算課税制度」は「新型贈与」とも呼ばれ、前年分の確定申告での利用者は約7万8,000人と贈与税申告者全体の18%を占めた。また、1人当たりの贈与額は(非課税分も含む)約1,485万円と旧制度に比べて4.2倍に増えている。
●  平成15年度に創設された相続時精算課税制度
  「相続時精算課税制度」は、今までよりも生前贈与をしやすく、親から子への資産移転を促進する目的としてできた相続税と贈与税を一体化した新しい課税制度である。
  相続のときに、生前贈与を受けた財産と相続財産を合計して相続税額を計算する。すでに納付した贈与税分を差し引き、相続税を納付する。この適用を受けると贈与税は、贈与財産が2,500万円までなら非課税となり、2,500万円を超える部分は、一律税率20%となる。また、この制度は選択制で、受贈者の判断で相続時精算課税制度による精算課税贈与か、従来の暦年課税贈与か、どちらかを選択できるが、特に選択しなければ暦年課税贈与となる。
●  適用を受けるための条件
  贈与する人は、財産の贈与があった年の1月1日現在の年齢が満65歳以上の親で、贈与を受ける人は、満20歳以上の子などの直系卑属である推定相続人(代襲相続人、養子を含む)に限られるが、贈与を受ける人については、特に人数制限はない。
●  適用を受けるための手続き
  受贈者は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署に相続時精算課税贈与を選択する旨の届出を贈与税の申告書に添付して、提出する必要がある。贈与税額が非課税枠内に収まり、納税の必要がない場合でも申告は必要となるので、暦年課税贈与とは違う点となる。
  また、最初の贈与時に届出をすれば、相続時まで継続される。つまり、一度この制度の適用対象となった親からの贈与については、その親が死亡するまで、この制度の適用を受けることになり、通常の暦年課税贈与に、戻すことはできない。財産の贈与を受ける子が複数いる場合は、その兄弟姉妹が、それぞれ別々にこの制度を選択でき、財産を贈与する側の、父または母ごとにこの制度を選択することが可能となる。贈与財産の種類、金額、贈与回数には、制限がない。
●  住宅取得の場合は、3,500万円まで非課税
  住宅取得資金等については、3,500万円まで非課税で贈与することができ、親の年齢制限がなく、65歳未満の親からでも贈与が受けられ、住宅取得資金等の場合のほうが、より優遇されている。
●  今後の動向予測
  少子高齢化・人口減少という流れがますます強まる中で、今後さらに「相続時精算課税制度」は利用されていくと思われる。
  また、実務面においても、相談件数が今年に入ってさらに増えている感がある。それに不動産デフレも進行中といえるので、以前に購入した住宅が債務超過に陥り、売るに売れないという人も多い。そうした点においても利用につながっていくことと思われる。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.09.06
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