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意識調査研究から見えてきた少子化原因
  厚生労働省が少子化対策に向けて意識調査を行った(「少子化に関する意識調査研究」)。この調査の特徴は、子どものいない世帯をいくつかに分類して、それぞれに意識調査を実施している点にある。その分類とは、(1)20代独身、(2)30代以上独身、(3)子どものいない夫婦、(4)一人っ子の家族、(5)複数子の家族、などである。
●  独身でいることにも不安を感じているが
  まず独身の理由については、「適当な相手がいない」という理由が最も多いが、次の理由として、20代独身は「経済力がない」であるのに対して、30代独身は、「親の扶養・同居問題を抱えている」という回答が高まってくる。また30代独身の女性に限れば、「義父母や親戚などの人間関係が複雑になる」も多い。
  このように30代独身は、結婚を忌避する傾向がある一方、独身でいることへの不安もある。それは、「自分の健康・病気」「家族の健康・病気」「老後の生活」「親の介護」など、身の回りの不安が強い。特に30代になると、自分の健康や老後、親の介護などへの不安が強まってくる。
●  少子化は結婚や家族に対する意識の差が原因!?
  次に、子どものいない夫婦と、一人っ子の家族に対して、子どもの位置付けを尋ねたところ、子どものいない夫婦は、「独立した一人の人間」「自分の血を後世に残せるもの」として子どもをとらえているのに対し、一人っ子の家族は「生きがい・喜び・希望」「無償の愛の対象」「夫婦の絆を深めるもの」という回答が多かった。子どものいない夫婦の回答には実感のなさが目立つことが分かる。
  子育てに対する考え方として、「子育ては辛いことより楽しいことが多い」という意見に対して、一人っ子の家族は「とてもそう思う」という回答が5割を占めるのに対し、子どものいない夫婦は2割程度と少なく、子育てへの杞憂が目立つ。
  子どもいのない夫婦が今後子どもをもうける意向は、男性は6割と高いが女性が3割と低く、夫婦間での意識の格差が浮き彫りになっている。
  次に一人っ子の家族と複数子の家族を比較してみる。まず平均結婚年齢は一人っ子の家族の男性は29.3歳であるのに対して、複数子の家族の男性は27.1歳と2歳の開きがある。女性も同じく1.8歳の開きがある。これは一人っ子の家族は結婚の年齢が遅かったため、子どもが一人しかいないとも考えられるが、一人っ子の家族の結婚のきっかけが「自分の年齢を考えて」という回答が最も多く、受身的な結婚が、子どもがいないことに関係しているのかも知れない。
  少子化の原因は、女性の晩婚化と、経済的または子育てのマンパワーの不足が原因であると考えられてきたが、この調査によって結婚や家族に対する意識が子どもの有無に結び付いているとも考えられる。
出典:厚生労働省「少子化に関する意識調査研究」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2004.09.13
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