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銀行による証券仲介業開始を目前に控えて
  この12月、いよいよ証券仲介業が銀行にも解禁される予定である。   「証券仲介業」とは、現在証券会社でしか行うことができない有価証券取引(株式の売買や外国債券の売買)について、内閣総理大臣の登録を受けた証券仲介業者が、証券会社と業務委託契約を結ぶことで、投資家と証券会社の取引仲介を行うものである。今回の解禁によって、銀行や税理士法人、FPなどの証券仲介業者は、業務委託契約を結んでいる証券会社の有価証券の取り扱いが可能となる。そのため、この証券仲介業にはメガバンクや信託銀行だけでなく、有力地方銀行も数多く参入してくると考えられる。
  ここでは、この解禁が銀行や顧客にとって、どのようなメリットがあるのかを考えてみよう。
  まず、顧客側のメリットとして、従来は、証券会社でしか購入できなかった株式や外国債券などが、この解禁によって銀行でも実質的に購入可能となる点が挙げられる。これによって、顧客はより多彩な資産運用の提案を受けることが可能となる。
  具体的に言えば、今後、銀行が顧客に株式運用を提案する場合、従来の「投資信託」「変額年金(運用するファンドを株式運用の投資信託から選択する場合)」に加え、新たに「個別株」を提案できることになる。
  また、顧客に外貨運用を提案する場合も、従来の「外貨預金」「海外債券に投資する投資信託」「定額年金(外貨建てタイプ)」に加え、「個別の海外債券」を提案できることになる。これらは10年前の銀行では考えられないことであり、選択肢の多様化という点から考えても、顧客の利便性は着実に向上しているといえよう。
  一方、銀行にとってのメリットは、次の二つが考えられる。
(1)大口顧客囲い込みの商品が増える
  特に、銀行・信託銀行内のプライベートバンカーなどが顧客を囲い込む際に、個別の株や債券を販売できるようになることの効果は大きい。また、多彩な提案を実行することで、顧客からの信頼度も一層向上する。
(2)個別株や債券販売による仲介手数料が期待できる。
  また、税制についても、政府の「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと、政府税制調査会において「金融所得一体課税」の検討がなされている。この金融所得一体課税は、従来のように金融商品ごとに税率を決めて課税するのではなく、異なる金融商品の損益であってもそれらを合算し、一体的課税を行うというものである。これが実現されれば、銀行窓口で購入したさまざまな金融商品の損益も合算して課税されることとなり、その点からも顧客へのメリットは大きい。
  以上のように、銀行の証券仲介業参入は、利便性・税制の両面から考え、銀行・顧客の双方にメリットをもたらす規制緩和といえる。今後、どのくらいの銀行が、証券仲介業に参入していくか注目したい。
2004.09.13
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