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4,000万円未満で、都心のマンションが購入可能に
●  首都圏では、約30キロ接近
  不動産情報サービスの東京カンテイ(東京・品川)と日本経済新聞社が、販売実績を基に「75平方メートルの新築マンションを4,000万円で購入できる境界線」を共同で調査した。
  その調査結果によると、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県)では、東京駅までの距離が約30キロ縮まった。
  また、近畿圏(大阪、兵庫、京都、奈良の二府二県)では中心街を除き価格下落が続いているため、4,000万円の同心円状の境界線が消滅した。
  首都圏と近畿圏で広さ75平方メートルの新築マンションを4,000万円未満で購入できる地域が、10年前の1994年に比べて、大幅に都心に接近してきたことになる。
●  調査方法は?
  調査の方法は、首都圏と近畿圏で1994年の1年間と2004年上半期に販売されたマンションを、面積あたり平均単価から75平方メートルに換算し直して、理論上の4,000万円の境界線を作った。
  ちなみに、75平方メートルの基準は3人家族の居住面積の目安とされている。
  また、4,000万円は、サラリーマン世帯の平均年収(03年は714万円、総務省調べ)の5.6倍にあたり、民間調査の首都圏マンションの平均年収倍率とほぼ同水準である。
●  首都圏での境界線の推移
  1994年当時の首都圏での境界線は、東京駅から84キロの東海道線・小田原駅(神奈川県)、50キロの中央線・西八王子駅(東京都)や埼京線・大宮駅(埼玉県)、外房線・蘇我駅(千葉市)などの地点だった。
  それが2004年では、東海道方面では横浜駅と横須賀線・鎌倉駅周辺などを除き、約60キロ縮小し、川崎駅と品川駅の中間点まで境界線が都心回帰した。千葉方面では、地下鉄日本橋駅からわずか4.3キロの東陽町駅(東京・江東)まで接近した。
●  近畿圏での境界線の推移
  一方、近畿圏は、1994年、山陽本線・鷹鳥駅(神戸市)、京阪線・浜大津駅(滋賀県)、近鉄線・菖蒲池駅(奈良市)、南海本線・泉大津駅(大阪府)などを結ぶ内側の地域が4,000万円以上であった。しかし、2004年では、一部繁華街や高級住宅街に水玉模様の境界線ができただけとなった。
●  都心回帰が鮮明に
  東京カンテイによると、「地価は都心の一部で反転したが、4,000万円マンションの境界線は縮小傾向が続いており、都心から遠い、ベッドタウンに住むという考え方が消えつつある」と分析している。
●  今後の動向予測
  今後も「75平方メートルの新築マンションを4,000万円で購入できる境界線」は内側に縮小していくものと思われる。
  8月に国税庁より発表された「路線価」は、さらに土地の下落傾向を鮮明にした。また、2006年3月期より適用される、「不動産に対する減損会計の導入」を控え、さらに企業の不動産売却傾向が続くものと思われる。
  さらには、少子高齢化という人口構造のマクロ的な変化が、都心回帰を後押ししているようである。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.09.13
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