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厳しさを増す労働組合の現状
●  減少が進む組合員数
  組合の組織率は、年々低下しており、いまや20%を切っている。そのような状況をあらためて確認する調査が厚生労働省から「平成15年 労働組合実態調査」として報告された。
  3年前と比べて組合員数が変化したかについて問うと、「減少した」が68.8%(前回の調査では58.6%)と多く、組合員の減少は続いている。
  組合員数が減少した理由は、「正規労働者の採用の手控え」(73.1%)、次いで組合員の「定年退職」(65.5%)、「自己都合退職」(60.1%)などの割合が高く、組合員の供給源が小さくなっていることが理由である。
  3年前と比べた組織率の変化の状況をみると、「変わらない」が59.1%、「低下した」が31.5%、「上昇した」が8.4%と、組織率の低下も進んでいる。
  組合活動の重点課題として組織拡大に取り組んでいる単位労働組合は24.8%であり、その取組対象としている労働者の種類は、「新卒・中途採用の正規労働者」(54.0%)、「在籍する組合未加入の正規労働者」(42.6%)などが高く、正規労働者のほかには「パートタイム労働者」(34.2%)などとなっている。
  組合費の1人あたり月額は3,927円であり、組合の種類別にみると、「単位労働組合」では3,901円、「本部組合」では4,317円である。3年前と比べた財政状況の変化は、「苦しくなった」が53.7%と5割を超えている。
  財政状況が苦しくなった理由は、「組合員の減少」が90.0%と圧倒的に高く、「組合費の引下げ・据置き・減少」が28.1%となっている。
●  組合活動への参加意欲も鈍る
  過去1年間における一般組合員の組合活動への参加状況をみると、「積極的である」が46.6%(前回48.6%)、「積極的でない」が52.5%(同50.8%)となっており、積極的でないとした単位労働組合が若干増えている。
  組合活動における重点事項をみると、従来の重点事項は、「賃金・一時金」(84.6%)、「労働時間(いわゆるサービス残業を含む)・休日」(59.5%)など、「労働条件」に関する事項が高く、今後の重点事項としては、これまでと同様に「賃金・一時金」(67.0%)、「組合員の雇用の維持」(57.4%)などが高いが、「経営方針、事業計画、企業再編、その他の経営参加」「企業の適正行動に関する監視、経営者へのチェック」「組合員の生涯生活設計福祉ビジョン」などのプラス幅が大きい。
  企業外上部組織への加盟状況をみると、産業別組織に「加盟している」労働組合は74.3%、地域別組織に「加盟している」単位労働組合は64.2%となっている。
  労働者の個別の労働問題に対する取組の状況をみると、「労使協議制度を通じて関与」(69.3%)、「各職場毎に担当の職場委員等を設置」(57.2%)などが高くなっている。
  組合活動の重点は賃金から組合員福祉に移っているといわれて久しいが、経営へのチェック機能という新しい役割で会社との共存を目指す方向性がうかがわれる。
出典:厚生労働省「平成15年 労働組合実態調査」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2004.09.21
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